24hours of Vampire
□STORY4―異常
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タイスは震える腕を力いっぱいつかんだ。落ち着け、落ち着け、そう自分に言い聞かす。今ここで逃げたら、ルーディンが、おばさんが。そうだ、あんなの見掛け倒しだ。よくわからないが何かの錯覚だ。いきなり自分に霊感がついたとか、そして、やつが見え出しただけで、そういうこともあるんだ。テレビでよくやっているじゃないか。ばかげた霊能力番組。明らかにやらせにしか見えないような。
何も恐れなくていい。やつには実態がないんだ。だとしたら、恐れるようなことなんて一つとしてない。簡単だ。そんなもの、無いと思えばいい。
怪物が歩くたびに地面が揺れる。
自分の頭がおかしくなっただけだ。テレビの見すぎだ。
タイスの頭は完全に混乱していた。震えがとまらない。怪物から発せられる悪臭が鼻につく。
とりあえず今はこの状況を打破したい。何でもいい。何か助けになるようなもの。人、武器、何だっていい。
そのとき地の底から低くうなるような声が教会に響いた。「小娘ぇ、どこにいる・・・。」
その瞬間、世界はタイスと怪物だけになった。やつはタイスをねらっていた。狭い空間にタイスと怪物だけ。力なく横たわる粉々の十字架。わずかな光はか細い月光。
歯がカタカタと鳴る。心臓の音が大きく聞こえて、耳がいたい。体中が温度をなくしたみたいに冷たい。
怪物はまだ自分には気付いていない。