24hours of Vampire

□STORY5―遺志を継いで
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 「今の若者は頭がおかしいやつもいるからな。で、薬は?」「やったことねぇって!!」「幻覚を見て家族を殺すなんてよくあることだ。」「おっさん、いい加減にしろよ!あたしは間違えてもじいちゃんを殺すことなんてしない!!歴代大統領に誓ってやる!」警官はため息をついた。「わかった。おまえが神父をころしていないことは認めよう。近所の人もそれはありえないといってるからな。だが、そうなると、この事件をどう説明したらいい?」「だーかーらっ、あたしにもよくわからないんだって!!」タイスはルーディンに言った。「おい、ルーディン、何とか言ってよ!あんたなら知ってるんだろ!?」ルーディンのことは多少話していない部分がある。白尽くめ集団につかまっていたということだけ伝えた。
 警官はルーディンに近づいた。「で、君は何か知っているのか?」ルーディンはそっと写真をもとに戻した。警官はそれが無駄だとわかっていた。さっきから、ルーディンは何を聞かれても黙り込んでいたからだ。ただ、今度はタイスの目がある。タイスは言える事でいいから、何とか言ってくれという目をしている。
 警官はため息をつく。「英語がわからないか?イラク人。」「わかる。」ルーディンはきっぱりと答えた。しかし、その目はきつかった。警官は少し面食らったようで、わざとらしく咳払いすると、えらそうに言った。「で、何を知っているんだ?」
 タイスは警官のその言い方にルーディンに話をふったことを少し後悔した。警官の言い方は明らかに彼を軽蔑している。
 しかし、ルーディンは少しもひるまなかった。「俺とやつらには関係がある。そして、神父さんや彼女、彼女の知り合いを巻き込んだ。だから、彼女は被害者だ。」「わかった。それは信じよう。なら、おまえとやつらの関係は?」
 タイスは少し耳をそばだてた。ルーディンはちらっとタイスを見て言った。「俺とあいつらは、関係はあるが、仲間でも何でもない。むしろ、憎むべき相手だ。あんた、白装束の中を見たか?中身は欧米人さ。」とげを含んだそのものいいに警官は気を悪くしたらしい。言い方がさらにきつくなった。「ほう。確かめてみよう。それで、どうしてあんなことになった?原型をとどめていない、彼女いわくおじいさんらしいが・・・だとしたら残虐な殺人事件だ。彼女が帰ってきたら、すでにことは起こっていた。それまでに何があった?そして、あのわけのわからない干からびたものは何だ?彼女はあれが生きて、動いていたと言った。そして、祖父を殺し、いきなり干からびた、と。」
 タイスは心の中ルーディンが上手く言うことを願った。「確かに動いていた。そして、それが彼女の祖父を殺した。」
 警官は眉をひそめた。「だが、あれは人間じゃない。それに死に方が奇妙すぎる。まず、あれは・・・私の知っている限り・・・生き物には見えない・・・。」ルーディンは悪人のような笑みを浮かべ、声を低くして答えた。「そうだ。人間じゃない。“悪魔”さ。そして、―俺がやつを殺した。」
 タイスは頭をかかえた。せっかく人がかくそうとしたことを。警官は面食らったらしい。一瞬顔がこわばる。しかし、すぐにルーディンをにらんだ。「そうか、ならばどうやって?あまりくだらんことを言うな。ためにならんぞ。」ルーディンはやれやれと肩をすくめた。タイスはひとつ息を吐いた。どうやら警官は、ルーディンが彼をからかっていると思ってくれたようだ。
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