24hours of Vampire

□STORY5―遺志を継いで
3ページ/5ページ


 その後、ようやく警察はひきあげた。時計は午後9時をまわろうとしている。
 タイスはドアを閉めながら頭をかき、大きくため息をつく。「あー、やっと帰った。」そして、ルーディンを見ると、笑顔で言った。「あんたにはいろいろ聞きたいことがあるけど、今はとりあえず飯にしないか?腹減ってない?」こんな言葉遣い、じいちゃんに聞かれたら怒られるな、タイスは笑ってそう付け足した。そんなタイスに心の痛みを覚えながら、ルーディンは首をふった。「いや、いい。俺は行かなくちゃいけないところがあるから。」
 ルーディンは玄関に向かった。「すまない。いろいろと。世話にな・・・」目の前にタイスが立ちはだかる。タイスは少しきつい目をしていた。「あんたには聞きたいことがある、って言ったろ?教えないなんて言わせない。あたしには知る権利があるはずだ。」ルーディンは目を伏せがちにした。表情がかげる。「もうこれ以上、あんたを巻き込みたくない。」タイスはルーディンににじりよる。「巻き込みたくない、って、ここまで巻き込まれて引き下がれるかよ。あたしはただ知りたいんだ、それだけなんだ。」「何を、何を知りたいんだ。あんな目に遭ったのに。」ルーディンも負けじとタイスの強い目を見つめ返す。タイスはひかない。「あいつらだよ、あの白装束のやつらとか、あの化け物のこととか・・・。あんたは何で追われてたんだよ。あんたはイラク人だ。」タイスの威勢が少し弱まる。「イラク人は普通アメリカにはいない・・・。戦争でイラク周辺の人たちの数は激減して、残り少ない人たちは収容所なんだろ?それなのに、何でアメリカなんかに、しかもこんな田舎町に・・・」ルーディンが化け物を殺したときのことは言わなかった。なんとなく言いにくかった。タイスは首をふった。説明がつかないことだらけだが、もうそうとしか思えなかった。タイスは静かに言った。「偶然じゃない気がするんだ・・・何かきっとあると思うんだ。」
 ルーディンは仕方ないというようにため息をつく。この少女は教えなければきっとてこでも動かない。ルーディンは部屋の奥に戻り、さっきの写真たてを手に取った。
「少しだけ、話そうか。俺も全てを知っているわけじゃないけど。ここに、アメリカにくれば何か得られるかもしれないと言われたんだ・・・何か・・・俺たちを救ってくれるもの。そう言われた。・・・タイス・ヴォルテン」
 タイスはルーディンを驚きの目で見た。「何で、名前を」タイス、としか言っていないのに。ルーディンはタイスを見た。「そう言われたんだよ、君の両親に。」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ