24hours of Vampire

□STORY6―迷い道
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―A.M.7:30―

 トラックの運転手の親切な計らいで2人はハンバーガーをむさぼっていた。年配の恰幅のよいこの運転手にはニューヨークの家族に会いに行くという適当すぎる理由を伝えていただけだった。
 太陽は昇りきり、少し気温も上がってくる。途中休憩に小さな町に立ち寄った。そして、再び出発すれば見えるのは再び地平線。アメリカは広い、ルーディンは改めて思った。こんな中で自分がタイスや彼女の祖父に会えたことは奇跡のように思えた。そして、同時に何かに仕組まれていたのではないかという恐怖も生まれた。偶然ではない、昨日のタイスの言葉が思い出された。もしかしたら、これからのことももうすでに決まっているんだろうか。だとしたら、ハッピーエンドは望めない。俺は死ぬしかない。おかしくなってしまう前に。しかし、タイスはどうなる?彼女は守らなければ。でないと、あまりにもひどい話だ。勝手に現れ、勝手に家族を奪った。ひどすぎる話だ。逆に今、彼女はよく自分と一緒にいられるものだと思った。
 いろいろと考えている間に、どうやらルーディンの表情は暗くなっていたらしい。タイスがその顔を覗き込む。「大丈夫か?気分でも悪い?」ルーディンはほほえんで首をふった。しかし、すぐに顔をしかめる。「タイス、女ならあぐらをかいて食べるなよ。」タイスはむっとした顔をして、胸をはった。「女があぐらかいちゃいけないなんて法律ないだろ!それ、女性差別だ。」ルーディンはあきれて首をふった。昨日までの静かさが嘘のようだ。
 タイスはハンバーガーをほおばりながら言った。「あんたさ、よくここまで来れたよね。」ルーディンは不思議そうな顔をした。タイスの顔が少し真面目になる。「だって、お金もほとんどないわけだし。一般人でも見つかったら、やばかったんじゃないの?どうやって来たの?」ルーディンは最後の一口を食べ終えると言った。「最初は研究所から出るアメリカ行きの小型飛行機に乗った。止まったのがけっこうあんたの町に近い場所だったし。それからは、英語は一応わかるから、人に聞きながら。荷物運びのトラックとかに忍び込んだり。」タイスは信じられないという顔をする。「あたしが言うのもなんだけど・・・あんたもけっこう考えなしね。」ルーディンは肩をすくめる。




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