小説

□ディナーを貴方と
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がやがやと騒がしい軍の食堂もランチタイムを過ぎれば、水を打ったように静かになる。
そんな中でグラハム・エーカーは一人、遅い昼食をとっていた。

「またマッシュポテトかい?」
「君こそまたドーナツじゃないか」
断りもなく隣に腰を下ろした彼は端正で優しげな顔に似合わず(いや合ってるのか?)ほぼ毎日のようにドーナツを食している。
それを昼食として食す彼のセンスが分からない。
いや、まず服や髪型のセンスの方が分からないのだが。
「僕のは必要な糖分を摂取してるからいいんだよ」
頭を働かすには糖分が必要だからね、とカタギリは笑う。
「マッシュポテトは美味しいし、低カロリーだからいいのだよ」
「肉好きよりはマシだろうね」
そう言われて、先日肉禁止令を喰らった同僚を思い出す。
「…今度からは栄養管理に気をつけよう」
「そうだね」
「時にカタギリは、料理は得意か?」
「まあ、嗜む程度なら」
何を言っているのか分からないという顔をする彼に去り際に「じゃあ君がバランスの良い食事というものを作ってくれ」と耳元で囁いてやる。
「機会があればね」
苦笑気味だが、了解の意図を含んだ返事に笑みを零す。

カタギリの手料理ならばきっとどんなにまずかったとしても私にとってはどんな高級料理も及ばないくらいに美味しいだろう。
まあ彼が嗜み程度と言うくらいだから、そつの無い料理が出て来るのだろうけど。



願わくば、貴方と二人きりのディナーを。

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