07/02の日記
16:58
あまりに更新していないので、放置してた小話載せてみる
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歴史のIF。
「もしも常盤が佐助の弟子だったら」
異世界に渡って。
何故だか縮んでいて。
掻っ攫われて忍者やる羽目になった私に、師匠として宛てがわれた人は、オカンでした。
「師匠、今日は何の修業をするんですか?」
問い掛けると、師匠こと真田忍軍の頭である猿飛佐助は、ニッコリと笑って私の頭を撫でてくれる。
「常盤は勤勉だねえ。自分から修業を口にするなんて!流石俺様の弟子っ!」
そう言って、本当に嬉しそうに笑う彼の人の顔は、弟子の私が言うのも何だが、もう本当にカッコイイ。
橙色の癖のある髪も、切れ長の目も、何もかもが完璧と呼べるバランスで構成されていて。
弟子入りしてもう何年も経つのに未だにうっとりしてしまう。
…と里に帰った時に言ったら、白雲に馬鹿にしたような目で見られたので、殴り飛ばしてしまった。白雲は師匠の素晴らしさを知らなさ過ぎるのだ。
「んじゃあ、今日は」
そんな事を考えていたら、ニッコリ笑った師匠が口を開いたので、意識を現実に戻す。
と、そこに。
「佐助えええええぇぇ!!」
遠くから、この屋敷の主である幸村様の声が聞こえて来て。
師匠の顔がぴきりと固まった。
私の顔も、同じ様に固まる。
「……師匠、行ってください」
ややあって、私がそう告げると、師匠はようやく硬直から復活し、眉を下げて困ったような顔をした。
「でも…」
「私なら大丈夫ですから」
笑って見せると、師匠は一層困ったような顔をした後、私をぎゅっと抱きしめてくれた。
「ごめんね、絶対埋め合わせするからね!」
「はい、頑張って来て下さい、師匠」
そうして飛び去って行く師匠を見送った私の背後に、降り立つ一つの影。
「…わ、風魔さん!?どうしたんですか!?」
振り向いた先にいた、黒装束の彼は、北条に仕えている忍者だ。北条と武田は同盟関係にあるせいか、こうして頻繁にやってくる。
「…………」
「え、師匠ですか?今幸村様のところです」
彼と会話をしていると、大概の人に不思議がられるのだが、私からすれば何で皆会話できないのか不思議だ。
唇は動いているんだから、読唇術は使えるはずなのに。
「……」
「え、だって主の御呼び立てですもの。私より優先されるのは当然でしょう?一人で出来る修業だって沢山ありますし」
風魔さんの疑問に答えて、私は苦無を取り出す。遠当ての練習をしようと思ったからだ。
そこに再びかかる、風魔さんの声。
「……………?」
「寂しくないかって……そりゃあ、寂しくないと言えば嘘になりますけど。言えませんよ」
苦無をにぎりしめる。
師匠なんだから、常に一緒にいて欲しいという気持ちは、やっぱり私の中にある。それは否定できない。
だが。
その願いが叶うということは、師匠が幸村様の側から離れる、という事でもあるのだ。
戦場でも、日常でも、幸村様の側で彼の方を支える師匠が、その場所を離れる。
……非常に恐ろしいことになりそうで仕方ない。
幸村様もいい歳なんだから、そうそう妙な事をなさらないとは思うのだけれど、怖くて仕方ない。
想像して黄昏れていたら、いつの間にそこにいたものか、風魔さんが目の前にいて私の頭を撫でてくれていた。
「慰めてくださるんですか?ありがとうございます」
『風の悪魔』なんて呼ばれているけれど、この人は凄く優しい。
と、撫でられる心地よさに目を細めていたら、殺気がほとばしった。
何事かと思って視線を流すと、そこには師匠がいる。
そしてその瞬間に風魔さんは姿を消していた。彼は何をしに来たのだろう。
師匠が舌打ちを漏らす。
「お早いですね、師匠?」
私が首を傾げて問い掛けると、師匠は瞬時に殺気を消して、私を抱き上げてくれた。
近くなった秀麗な顔が全力で笑っている。
「だってやっぱり、弟子の世話をきちんとしたいからね!」
そうして告げられた言葉に。
私は嬉しくなって、師匠の首に思い切り抱き着いた。
「……一人にしておくと、いらんのも寄ってくるしねぇ」
だから、そう小さく呟いた時の師匠の顔は、私には見えなかった。
終わる。
書きかけて放置してたのを加筆修正。
風魔さんは常盤に解るようにわざと唇を動かしているんだよ!
自分の弟子にしたいなーとか狙ってるから、佐助は気が気じゃ無いんだよ!
そんな話。
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