S.S(FF4)
□ military officer
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ざく、ざく、、ざく、ざく。
『いっち、いっち、いちに!』
ざく、、ざく、ざく、ざく。
『いっち、いっち、いちに!』
訓練は終わっているはずの時間帯。
暗くなりかけたバロン城の裏庭付近から、コンバットブーツの音と、
全然テンポの合っていない号令をかける声を聞いて、
しかし、聞き覚えのある声で、「まさかな…」と、まだ若い竜騎士団長は、声のする方に足を向けた。
「ぜんた〜い…1、1、1、2…とまれっ!1、2!」
この度、赤き翼の二つ名を持つ、バロン軍飛空挺団の、団長に任命されて間がない暗黒騎士が。
その剣術の圧倒的な強さからは似付かわしくない程、リズム感のない歩調で、1人で部隊訓練をしていた。
部隊長にもなれば、兵隊として言われるままに動けばよいというものではなく、その部隊を、号令で指揮し、自由に展開したり、収縮したりさせなければならない。
が、
どうやらこの桁外れに強い銀髪の騎士は、それが苦手な様子である。
しばらく前から竜騎士団を率いるカインにとっては『出来る事が当然過ぎる』部隊指揮である。
それを、あまりにもおかしなリズムで歩調を踏むセシルの姿に思わず吹き出した。
「カイン!?…み、見てたの?」
「すまん、からかうつもりはなかっ…」
最後まで言い切れずに、カインは腹をかかえて笑いだした。
「カイン〜笑ってないで助けて〜」
確かに。
今ここで親友に笑われることなど、実際に部隊を動かすときに失敗することに比べたら、今のセシルにとっては恥でもなんでもない。
カインはひとしきり笑って言った。
「セシル…俺は前々からお前が人間離れしてる、とは思ってたけど。」
セシルは、昔から異様に強かった。暗黒騎士になる必要がなかったくらい。
剣を構えれば、通常剣よりも長く、有利とされる槍で応戦しても、カインには全くハンディを感じさせないぐらいだった。
動きとか、筋力とかではなく、戦闘に必要な動物的な勘が、これ程鋭い相手は、カインにとって他にいなかった。
そのセシルが。