S.S(FF6)
□いつかの約束
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僕には聞こえてないとでも、思っているのだろうか。
外見が全く同じ兄と違い、僕は幼少期、身体が弱かった。
とはいえ、兄と比べて少々熱が出やすいだけで、重大な病を抱えていた訳ではない。
だけど『やはり弟君は』と囁かれたものだ。
父の弟も、身体が悪くて、やがて心も蝕まれていったのだ。
そんな弟を持つ父は、僕を鍛えるために、ダンカン・ハーコートという格闘家の元で、格闘技を習わせた。
そのせいか、成長期には背は兄より伸びて、靴のサイズも大きくなった。
成人儀式の日は、その前に海に行ったりして体調が悪くて、熱が出た。
それでも、そんな僕を見ては
『やっぱり弟君は…』
と言う者もいたのだった。
兄は、頭も良かった。
単純な計算だけなら、僕の方が早かった。
だけど、兄はその計算の「使い方」を知っていた。
僕には、兄が楽しそうに組み立てていく機械の中身や、図面がどうなってるかとかなんて、さっぱり分からなかった。
『お兄様の邪魔をしちゃ、いけないよ』
そう言われた事もあった。
でも、そんな時決まって兄は言ってくれたのだ。
『マシアスはとても計算が早いんだ。僕はマシアスがいないと、困るんだ』
どれだけ。
どれだけ心強かっただろう。
どこへ行っても、優劣を兄弟でつけられる。
どこに行くのも2人だから、仕方ないけど。
でも、兄だけは、僕を認めてくれていた。
だから例え優劣をつけられても、側にいることは、苦痛ではなかった。
むしろ、側にいなければ、逆に兄には劣等感しか感じられなかったと思う。
僕は頭を使う事よりも、身体を使う事の方が好きだったので、兄が大きな工作機械を運んだりする時は、僕の出番だった。
兄が1つしか運べないものも、僕は3つは運べた。
『マッシュはすごいなぁ』
そういって、笑顔が向けられている時だけが、僕にとって温かい時間だった。