S.S(FF4)
□命の現場から
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命の現場から
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カインは、昼からの交通取り締まりを終えて、一旦分駐に戻ろうとしていた。
━━暑い…
真夏の西日を背中に感じながらカインは汗を拭いた。
近くで何かが燃え盛り、その炎が自分に降り注ぐような、暑さ。
愛用の白バイに、飲み物を積んでいなかったことを汗まみれのカインは後悔していた。
真夏でも、半袖を着てバイクに乗れば、日焼けするわ乾くわ、万一事故をしたら大怪我をするわ…等の理由から、白バイ隊員の制服は、夏服も長袖のライダースジャケットである。
天候はからっとしているのにこの蒸し暑さはなんだ、自分の汗か。
軽い眩暈を感じながら、汗を拭いてヘルメットを被り直し、白バイにまたがる。
右足で蹴って、愛車のキックスターターのエンジンをかける。
アクセルを開いて、クラッチをつないでいく。
カインは、この大型バイクならではのモーターが唸る音が好きだった。
━━10分は、休めるか…
先程の違反車両の運転手が、少々ごねたので、休憩時間の終わりになっていた。
と、カインの左耳で、受令機が事件事故を知らせる警報音を鳴らす。
【…センター本部から…各移動局……現在、…高…道路上に於いて、大規模車両火災発生の模様…】
近くだ。
カインは、肩に引っ掛けてある無線機のプレストークボタンを押した。
「こちら移動局805。ただ今の車両火災の指令、本職直近におります。これより向かう。」
『センター本部了解した。現場は高速道路上である…よって所轄もすぐに対応出来ない…高速隊は別件事故取扱中である…よって、現場到着すれば、状況を速報せよ…』
「805了解!!」
言いながら、カインは赤色灯を回し、サイレンをけたたましく鳴り響かせながら、近くの高速入路へ緊急走行し出していた。
大規模車両火災…
━━休憩は、ナシ、だな。