longStory
□慟哭
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走って走って走って。
息つく間も惜しいほど走り続ける。
走り続けている剥き出しの脚は赤黒い血がこびりついていてしかしそんな事も気にならない程走り続けた。
(…早く、逃げなきゃ……!)
早くしないと掴まってしまう。
(……彼処なら…彼奴だったら……)
少女を追う者を止められる者が其処にはいる筈。
それを目指して少女は走り続けた―――…。
山の麓の小さな料理屋。そこの若い女将が店の前を箒でせっせと落葉を集めている。粗方落葉を集め、綺麗になった店先を満足気にみてフゥと一息ついた。
昨夜は大変だった。いつも長い散歩に出かける男に肩透かしを喰らい続けた面々が痺れを切らし、今やこの国のトップである男を使い豊富過ぎる財力と情報網を駆使して男を捕まえたのだ。そしてそれを聞き付けた年齢不肖の知将が彼の手足である者達に今は全国に散らばっているかつての仲間に伝え召集したのだった。そして昨日、久しぶりに再会した仲間は当然の如く呑めや喰えやの大宴会となったのである。