longStory

□慟哭 3
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アキラは時人の足に負担を掛けない様に背中を壁に寄りかからせ、宿の部屋にあった湯呑みに水を注いだ。

荷物の中から紙袋と陶器の小瓶を取り出して紙袋の中から一つ薬袋を出した。
「化膿止めの薬です。苦味がありますが飲んでおいて下さいね。」
そう言いながら時人に薬と水の入った湯呑みを渡した。

時人はアキラを警戒しながらもアキラの言う通り薬を口に含んだ。
薬を飲んだら、アキラが時人の正面に座って傷を見た。
暫く傷を見ていたが荷物から取り出したもう一つの小瓶の蓋を開け、その中に指を入れた。
ネトネトとアキラの指にまとらせた薬を丁寧に時人の傷口に塗り込んで行く。
時人はその様子を呆けた様に眺めていた。

アキラは丁寧に薬を塗り込んで行く。

恭しく、そして艶かしく。

そして薬を塗り終わった時、アキラが口を開いた。
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