longStory

□慟哭 8
1ページ/5ページ




険しい山道をものともせず鬼は進む。

才蔵からアキラの襲撃を聞いた灯は梵天丸の下へ向かって行った。

狂と螢は才蔵にゆやと時人が九度山に向かっていると聞き、其処へ向かっていた。



『くれぐれもご用心を。最早あれはアキラ殿であってアキラ殿ではない。』


才蔵が別れ際言った言葉。
もし真実ならば止めてやらねばならない。

幼い頃から自分の背中を追い続けた者が己の感情に押し潰されて苦しんでいる。


「…ねぇ、狂。」

それまで黙って付いてきていた螢がボソリと口を開いた。

「…なんだ。」

足を止めずに聞き返す。
螢もやはり狂の後を付いて行きながらまた口を開いた。

「アキラ見つけてどうすんの?」

思わず足を止めて振り向く。

ニ、三歩後ろにいた螢も同じ様に足を止めて目の前の男に視線をやる。


「…あ?」

聞こえてはいるが意図が判らない質問に多少の苛立ちを含めて聞き返す。
しかしそんな苛立ちもお構い無しとばかりに螢は呑気に狂を視界に入れている。
「アキラを見つけて、どうすんの?って言ったんだけど。」

「……………」

「………殺すの?」

僅かに狂の片眉が上がった。

実際アキラを見つけてどうするかは頭になかった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ