longStory
□慟哭 10
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二つの影の間に静寂が支配する。
周りの景色はゆっくりと濃い闇に色を染め替える。
月が山と山の間から顔を覗かせて闇色の景色に微かな光彩を与える。
辺りは闇色から濃い群青色に染まった。
「……アキラ」
静かに。
常の物とは明らかに違うその音にアキラの全身が反応する。
幼い頃からその背中を追い、執着し続けた偉大な男。
何度も挑戦し、その度々地に捩じ伏せられた圧倒的な鬼。
その鬼が、覚悟を纏っている。
自分を葬る覚悟を―――。
泣き出したい様な感情が喉奥から突き上げて来て必死に其れを飲み下す。
憐れみも蔑みも其所には存在しない。
在るのは、慈しんだ紅い瞳の鬼とその鬼にこれから殺される男が立っているだけだった。
風が吹く。
同時に二つの影が動いた――。
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