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□慟哭番外編〜宵闇は優しく〜
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「…静かだねぇ。」
「………あぁ。」

風が吹く度辺りは次第に暗闇に支配されていく。

灯と梵天丸は幸村の屋敷の方をじっと見詰めていた。

数刻前には地面が揺れる程の轟音と激しい地揺れが絶え間無く感じられたのに今は鳥が羽ばたく音すら耳に届く。
聞こえるのは木々がざわめく音と風が哀しく通り抜ける音だけ。


時人は覚悟をその身に纏い、其処へ向かった。

聴きたかった。

確かめたかった。

アキラの想いを。

時人の想いを。

けれど。


「…なんでだろうねぇ?」
「ああ?」

幸村の屋敷に着いて時人の顔を見た瞬間、勢い込んでいた灯の気勢は削がれてしまった。

時人は良く手入れされている庭で独り佇んでいた。

風に靡く萌黄色の髪を疎う事もせず、ただ静かに。
唯一無二の存在である背中の主を待っていた。

声すら、掛けられなかった。




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