longStory

□慟哭番外編〜地の果てまでも〜
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繰り返される悲劇


繰り返される輪廻


終わりの見えない煉獄


最初(いやさき)にて最後(いやはて)なる軌跡


点は線に


今こそ全てが 昇華する時






慟哭番外編 ‐地の果てまでも‐


「えー、じゃあ次は48ページを開いて。さっきの公式を当て嵌めると――……。」


教師の声とペンを走らせる音が遠くに聞こえる。

時人は未だに静まらない心臓にそっと手を当てた。

ドクドクと体ごと揺らす様な鼓動が時人を襲う。


あの瞳

あの声

あの抱擁

全てが時人に戦慄と、圧倒的な昂揚を自覚させた。
逃げ出したい衝動と血が沸き立つ様な欲動に時人は混乱を極めている。

そしてこの感情に何とも言えない懐かしさを感じ取って。

怖いのに知りたい。

ちらりと視線を上げて斜め前の背中を見た。

決して男の部類では大きくないだろうその背中。

そこだけ切り取られた様に鮮明に浮かび上がる。

あの背中

あの後ろ姿

あんなに怖かった人の背中に何故か安堵感を覚える。

絶対的な何かを感じて見詰めた。

縋る様に、見詰めていた。

その背中は、彼が刹那に見せたあの酷く曖昧な表情に似ていた。

哀しく、切なく、そして優しい。

あの表情も、この背中も、込み上げる程の何かを時人に教えた。

感情は時人の中で膨れ上がり、弾けてしまいそうだ。

意味も無く、涙が溢れた。

只あの背中が、恋しかった。






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