longStory

□堕ちろ
2ページ/6ページ




鬱蒼とした森の中を黙々と進んで行く。
道無き道を体にまとわりついてくる枝を払い除けながら時人は兎に角先を急いだ。
別に行く宛て等何もない旅なのだから急いでこの森を抜けなくてもいいのだが森の中特有の静けさとまるで閉じ込める様に立っている木に言い様の無い苛立ちを感じていた。
それともう一つ時人の苛立ちを煽っている事があった。
それはいつも追うべき背中の持ち主が自分の背後にいることだった。
その開かない双眼の奥の瞳にじっとり見つめられている様な気がして時人は肌が粟立つ様な感覚に落ちていた。
時人がここまで意識するのは昨夜突如降り注がれた言葉が余りにも衝撃だったから。
その言葉には確かに熱が含まれていて。









『私の物になりなさい。』








……だって、おかしいじゃないか。そんなこと。綺麗事言うつもりなんか無いけど、でもボク達の間にそんな物は必要ないだろ?今までだって上手くやってきたのにどうしてそれを壊そうとするの?アキラ、どうしても壊したいの?
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ