longStory

□慟哭
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「全く、人の店を勝手に貸し切り状態にしてくれちゃって!誰が片付けると思ってんのかしらッ!」
店の中に入り、その惨憺たる状態を見て軽く目眩を起こしながら手際よく片付けて行く。
そこでふと思い出した。
(そういえばどうしたんだろう。)

昔旅をした仲間の中で唯一酒を飲まない青年がいた。いつも仲間が飲み散らかした後片付けを仕方ないですねと呆れた顔をしながら一緒に片付けていた。
今はまだ青年と死闘を繰り広げた少女と共に旅をしているが崇拝している男の顔を見に来ると思っていたのに。
「……あっそういえば…。」

もう一人いた。
けれど彼の事はあまり気にならない。彼もまた最強の男になるべく旅をしているのだが江戸を目指して海を越えた男だ。多分ここへ来る気はあってもとんでもない所でうろうろしているに違いない。

そう思ってクスッと一人で笑っていた時、店の中に誰かが入って来た。

「あっすいません、お店は夕方から……」
女将が振り向いてその人物を見た瞬間、その愛らしい瞳に驚愕が走った――――。
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