longStory

□慟哭 3
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「私が怖いですか?」
静かにアキラが聞いてきた。

時人がハッとしてアキラの顔に眼を向けた。

時人はアキラの顔を見た瞬間、心臓を鷲掴みされた様に身体が動かなくなった。
アキラのその閉じられた双眼から見える筈のないアキラの瞳が見えた気がしたから。

熱に浮かされた様に燻った色の瞳が時人を見据えていたから。




怯えた瞳で此方を見詰める時人にアキラは構わず畳の上へ組み敷いた。膝で脚を割り、両手を顔の横で拘束したアキラは時人の耳元で囁いた。

「………私もね、怖いんですよ。………自分が。」
「………………?」
アキラは顔を上げて時人を見下ろした。
時人が涙を溜めた瞳で見上げている。
その顔を見てアキラは口角を上げた。

「……や、……やだ………」
時人が震える口唇で懇願した。
抜け出す事等すぐに出来るのに身体が金縛りにあった様にびくともしない。
アキラが見せた肉食獣を思わせる欲望を目の前にして時人は只身体を震わせるだけだった。

しかしアキラは意に介する様子も見せずこう言った。



「絶対、逃がさない。」

遂にアキラは行動に出た――――――――――――――――………。
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