longStory
□慟哭 5
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「――ハッ…、」
時人は目を開けて息を吐いた。
(………夢……?)
時人は目を閉じフゥと息を吐いた。
背中は汗をかいたのか襦袢が冷たく肌に張り付いている。
時人は額に張り付く髪を指で剥がしながら目を開けた。
視界の先には不気味に揺れる木とその隙間に見え隠れする闇が拡がるだけだった。
あの後ゆやに連れられ逃げている途中にサスケに出会い、取り敢えずは九度山を目指す事になった。
どうやらサスケは幸村の命令でゆやの店の近くで待機していたらしい。
ゆやの話を聞いたサスケは梵天丸の加勢に出ようとしたがゆや一人で時人を連れて逃げるのは難しいと判断し、二人を連れて山を越して行った。
「起きたのか?」
声のする方へ目だけ向けるとサスケが薪の前に座っていた。
暖かい炎が揺れてサスケの顔を照らしている。
「もう少し寝ろよ、まだ夜中だからな。」
「…………あったかい………」
「は?」
サスケは時人の顔をみた。
じっと薪を見詰めている時人の顔は薪の近くにいるせいか桜色に色付いている。
「当たり前だろ、薪の側にいりゃ。」