小 説 2
□ちいさなきみ。1
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ある日のことだった。
いつも通り、学園生活支援部ーーー『スケット団』の部室でトランプタワー
とかゲームとかやってグタグタしていた俺たちだったが、
突然チュウさんがお邪魔してきて、いきなり依頼だ!!と大声で叫ばれた。
何事かと思ったら机の上にそっと怪しげなビンを置かれ、
「コレ届けることがお前らの仕事ね」と俺らに命令した。
何偉そうに言ってんの!?アンタ!と言いたいくらいだな、うん
何やら嫌な予感もするが、置かれたビンをよーーーく見てみると例の若返り薬だった。
何とも実験を重ねていった結果、時間内に若返る事が出来るということになったそうだと。
届けろって、これを?と俺が尋ねてみれば、チュウさんはウン!と小さな子供みたいに頷いた。
はぁ?また事件でも起こすつもりか!と怒鳴ってやったが、本人は涼しい顔で
よろしくぅと言い残し部室から出ていってしまった
・・・・そこで強制的だが依頼ということで、俺らスケット団は一年生担当のある先生に渡すことになった。
ちいさなきみ。
「またあの薬かよッ。今度は時間内に若返る事が出来るんだってなー
更にパワーアップしてやがるよチュウさん・・・」
「渡す相手は一年生担当の鈴木先生やろ?えーっと確か今夜、合コンしに行くんやってな」
『それで若返った鈴木先生は綺麗なお姉さんとデート計画だなww』
鈴木先生は歳のせいかモテないらしくて、もう一度若返って
若い女の子とデートがしたい為にチュウさんにお願いしたわけだそうだな。
なんなんだ、若返りって・・・また失敗して身体まるごと若返って幼児化でもすんじゃねーのか。俺ん時みたいにさぁ。あと精神的にも幼くなっちゃったりして笑
とりあえずこの怪しげな薬をとっとと鈴木先生に渡さねーと。
あとで鈴木先生に感想聞くのもいいな〜笑
そんなことを考えながら、俺らは目の前にあった階段を降りようとした。
「ーーー待てっ!藤崎!!」
突然、背後からダイナマイト級の爆弾のようなデッケェ声が降りかかってきた。
あ、この声はもしかして・・・・
恐る恐る俺らはまるでホラー映画のようにゆーっくりとギギギギ・・・と音が出そうなくらいに後ろを振り向いた。
そして声の正体を見た途端、俺らはうげっ!と渋い顔になった
いつどこでも、これって運命ですか?と言いたくなるくらいにバッタリ会ってはギャーギャー喧嘩しちゃう相手。
そう、スケット団にとって天敵でもある、生徒会の・・・副会長だ。
眉間にシワを深ぁぁく刻み込みながら、そいつは俺を睨んでいた。
「うぇぇーなんだよぉ椿かよぉ下まつげかよぉ」
「煩いぞ愚か者!何だその手に持っている怪しいモノは」
椿にそう言われて、ハッとした俺は慌てて若返り薬が入ったビンをサッ!と後ろに隠した。
ヤバイ。めっちゃ睨んでるつーか怪しまれてる!
下まつげがびっしびし踊ってる・・・のは置いといて、コイツだけには絶対に知られたらいけねぇ!
チュウさんに責任回ったら俺らスケット団もう終わっちゃうからね!
これだけは何としてでも避けたい!
後ろにいたヒメコとスイッチも、慌てて俺の前に立ちはだかって
何でもない!!と手をぶんぶん振ってる。
それに対してますます眉間のシワを深くし、椿はズカズカと
ヒメコとスイッチを押しのけ、俺の前まで来て腕を組むと般若のように
ギンッ!!と睨んできた。
怖い。めっさ怖いんだけど!くそう、ビン持ってるせいで何も反撃出来ねえ。
「ソレを見せてみろ藤崎!」
「ヤダ!」
「何っ!」
お互いどちらも一歩引かず睨み合う。ここで引いたら負けだ!
そこで椿がフンッ、と鼻で笑うといきなり俺の背後に回ろうと素早く移動した。
慌てて俺も身体の向きを変え、後ろにあるビンを見られないようにした。
・・・・くっそう!なんなんだコイツ!素早いつーか、しつけぇ!!
ビュンビュン移動しまくって背後をとろうとしてやがるよ!何この下まつげ。
「隙ありっ!!」
「ーーーーあっしまった!」
いつの間にか両手を掴まれ、がっちり固定されてしまった。
くそっ!手に持っていたビンの存在がバレてしまった!!
素早くビンに手を伸ばそうとした椿に、俺はやむを得ずビンを空中に投げた。ぽーーーん、と高く飛んだビンに目が行った椿に俺はさっきのお返しといわんばかりに、椿にタックルをかましてやった。
ドタタン、と俺と椿は床に倒れてしまい椿の上に覆いかぶさった形になった俺は、椿が身動き出来ないことをチャンスとみて慌てて落下中のビンを受け取ろうと手を上に挙げた。
が、しかし
「このっ・・・・邪魔するなあぁ!!」
逆に今度は俺が椿に腹を蹴飛ばされ、後ろに倒れてしまった!
かわりに、椿が落下中のビンを受け取ろうと手を伸ばす。
ビンが椿の手にーーーーと、思ったが。
それは椿に捕らえられることなく、何故か椿の顔にヒットしてしまった。
それと共に、ビンの蓋が外れ中の液体がバッシャーン!!と顔中にぶちまけられた。
しまった!!と俺は急いで痛む腹をかかえながら椿に近寄る。
「おっおい!!大丈夫か椿!?」
ガクガク、と椿の肩を揺さぶってみるが何も返答なし。
なんかぼうっとしている。目が。
ヒメコとスイッチも急いで俺のところに駆け寄って、同じように大丈夫か!と声をかけた。
しかし何度も声をかけても、虚ろな目で俺の顔をじっと見てるだけだった。
再び肩を揺さぶり、大丈夫か!と声をかけてみるとーーーー
「・・・っぐああああああ!!身体があつい・・・!」
いきなり叫んだかと思うと、手で頭を押さえながら縮こまってしまった。
それと同時に、椿の身体から煙がもくもくと溢れ出て何も見えなくなった。
「おっおい!!どうした!まずいことになったのかこれ・・・!?」
「ちょっ・・・待てやボッスン!この展開ってもしかして」
『前にも』
なかったか?と、俺らが口を揃えて言おうとしたところだった。
もくもくと溢れ出ていた煙が突然嘘のように消えはじめ、椿の姿が漸く見えてきたーーーーー
「・・・・あれ?」
何故か椿の姿は見当たらず、椿が身につけていたシャツとズボンが何故か床に散らばっており、よくよく見てみると、シャツが妙にぽっこりと膨らんでいる。
「・・・・あっこれもしかしてアレですか?なんか嫌な予感しまくりなんですけど」
「ええからシャツん中見てみぃ!!」
ヒメコにそう言われ、俺は躊躇いつつシャツに触れてみた。
そして掴み、上に引っ張りあげるとそこには・・・・
『ちっさな、ちっさな、生意気なアイツがおりましたとさ。』
何!昔話みたいに語るな!とスイッチにツッコミを入れる俺。
真っ黒な大きな目にプニプニとした柔らかな身体をした、椿がそこにいたのだ。
幼稚園児くらいであろう、とても幼い姿になった椿に俺はあんぐりと間抜けな顔になってしまった。
小さな椿はまるで小動物のような目で俺の顔を見上げている。
「うわっやっぱ小さくなっちまったか!!えーーーっと・・・椿、俺だ。わかるか?」
とりあえず声をかけてみたが、何も返答なし。
「椿?おい、大丈夫か?身体変なとこない?」
そっと椿に触れようとした瞬間ーーーーー
ビクッ!!と椿は怯え、縮こまってしまった。
それに俺らは理解出来ず頭ん中がハテナでいっぱいになった
「えっええ〜と;俺だよ!藤崎だよふじさき!」
ふるふる
おおお!なんか反応したっぽい!!ちょっと僅かに首を横に振った椿に
大丈夫であろうと確信した。
とりあえず小さくなった事以外は問題ナシ、ということだな!
「今お前小さくなってんの分かるか?液体被っちゃってそーなっちまったんだよ。」
「一応謝ってやったれボッスン」
「ええ!?何でだよ!最初に突っ掛かって来たのコイツだろ!」
思わずヒメコに声を荒げてしまった俺に、椿は驚いたのか涙目になってる。
そしてぐずぐずし始めたかと思うと、泣き出してしまった。
びええええん、と顔に似合わずデケェ声で泣く椿に俺はオロオロする。
声デカイつーかうるせぇ!これじゃ他の生徒にバレてしま・・・・
「よお、お前らどーしたんだ??何かうるせぇけど・・・」
ぎくり!!
なんか妙に聞き覚えのある声に振り向くと、そこには生徒会の会長である・・・・置物もとい安形が立っていた。
何でコイツがこんなとこにいんだよ!??
「ちょっちょ何でお前がここに!?」
「ん?あぁ、椿のヤツがなかなか帰ってこねーから様子見に来たんだよ。」
「へっへぇ〜〜!!」
やばい。ヤバイヤバイヤバイ!!副会長である椿がこんなんなっちまってるの
知られたら・・・・!
冷や汗がブワッと顔じゅう溢れ出す俺ら。
バレてねぇだろうな!??
「・・・・ん?なんだその子供は。どーしたんだ??」
「あっこ、これは・・・・その・・・!」
「何でもない!!ちょっと依頼頼まれてんねん!子守や子守!!」
それにふぅん?と不審に思いながらも、そっかぁと答える安形。
慌ててヒメコがフォローしてきたおかげで何とか逃れたみたいだ!!
「ーーーあ、でもこいつ・・・なんか誰かに似てるなぁ」
って・・・ぎゃーーーーーー!!!!バ、バレ・・・!?
「何でもあらへん!!ボッスン、スイッチ行くでーーーー!!」
気が付いたら、ヒメコに腕を引っ張られ(俺は幼児化した椿を抱えてる)
スイッチとヒメコと一緒に逃げていったのだった。
後ろで安形が「頑張れよー」とエールを送ってくれた。
ーーーーーーあとがきーーーーーーー
はい、これやってみたかったネタでした☆
初めて安形出たつーか、なにこれ笑
幼児化した椿はマジで可愛すぎるだろw
2に続きます!