小 説

□初めての一歩
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「相変わらず腑抜けた奴だな!! まったく話にならんッ」

「な・・・何だと!! 下マツゲ野郎に言われたくねーッ!」

「変顔スベリ野郎」

「うっ・・・ば、バーカバーカ!!」




二人の男子が学校の廊下で

ぎゃあぎゃあ言い争いしていた。



どちらとも負けず嫌いで、お互いを罵っていたが、

椿という少年のきっつ〜いトドメにより

耐え切れず、泣き出しながら

藤崎という赤い帽子を被った少年は、



「バーカ!!」


と言い残し逃げて行った。











初めての一歩













キーンコーンカーン・・・



校内でチャイムが流れる中、

生徒たちはそれぞれ部活動しに、

教室から出て行く。




そんな中、藤崎は机の上に顔を伏せながら

はぁ〜・・・とため息をついていた。



「なんや、ボッスン!

 ため息なんかつきよって。何かあったん?」



不意に声をかけられ、ふと顔を上げると、

そこにはヒメコが立っていた。


「いや別に何でも・・・」



はぁぁ、とため息をつきながら

そう答えると、ヒメコは、

呆れた顔を見せながらまったく・・・と零す。


「アンタまた椿と喧嘩したんちゃう?」


ぎくり。



本当のことを読み抜かれた藤崎は、

思わず目を泳がせた。



「ったく・・全然ちっとも変わらんなぁ。

 廊下でばったり会う度にぎゃぁぎゃぁ騒ぐし。

 別に悪態つかんでもええのに」


「う、うるせーな。向こうだって

 俺を見た瞬間、こう眉間にシワ寄せてさ!

 『何やってんだ貴様!』とかさぁ〜」



ブーブー文句を言ってたら、

ヒメコにガツン!と頭を叩かれた。



「いてーッ!」

「アンタらどっちもどっちやな!

 ちっとは愛想良くせぇや。

 毎回同じ喧嘩ばっかで呆れるわー」



先に部室行くで?とヒメコは

手をひらひら振りながら、

さっさと教室を出て行ってしまった。



一人残された藤崎は、何なんだよ〜と

頭を抱えて、再び机の上に顔を伏せた。


ちらり、と教室の外を見てみると

ほのかに赤く染まった空が目に入った。




「・・・愛想よく、ねぇ。」




(あの椿相手にか?むずいもんだなー。)



むっつり顔の椿を想像してたら、

またため息がこぼれた。

毎回、キツい一言でダメージを受けてしまうので、

これが結構辛い。




そういえば、椿の笑った顔とか

見た事ねぇなぁ・・・と呟く。



(椿の笑顔なんて、俺は一生見れないだろうな・・・)



あの仏頂面が笑ったら、どんなんだろうか・・・?

と、今度は盛大なため息が出た。



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