小 説

□夢見る君
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会長からの報告で、スケット団が
ふざけてボール遊びをしていたら、
ガラスを割ってしまったという事件があった。

またあいつらか!と僕の怒りは最高潮まで来ていた。


しかもほとんど藤崎が原因だという。
ったく!何をやっているんだ、あの男は!


高校生なのに廊下でプロレスごっこに、サッカー・・・とか。
全く呆れる。あいつは小学生か。

こうなったら反省文をきっちりと書いてもらおう。
会長たちは「まぁまぁしかたない」と言うけれど
それでは気が済まない。僕はそれほど甘くはないからな!


覚悟しとけよ、藤崎!!

僕は反省文を書く為の用紙を手に持って、
スケット団の部室へ乗り込む。





夢見る君






「藤崎ーーー!!いるかー!?」


勢いよくドアを開けてみたら、部室は
しぃん、と音一つすらしない。

・・・誰もいない。


勝手にお邪魔して、部屋の周りを見回してみる。
どうやら鬼塚や笛吹はどこかに行ってしまった模様だ。
藤崎も見当たらない。

説教しようと思ったのに、誰もいないとは。


「ったく、藤崎め。どこに行ったんだ」

イライラがまだ治まらず、僕はそばにあった
椅子を軽く蹴った。

ゴン!と蹴ったその直後、
別の場所から物が落ちる音が聞こえた。


その音にびっくりし、再び周りをよく見回してみると、
部室の隅っこに置かれてあるソファーから
人間の腕らしきものがダラン、と放り出されていた。


僕は恐る恐るソファーに近づいてみると、
毛布で包まれて塊になってる物体があった。

もしかして、と思いつつ僕はそっとその
毛布を剥がしてみる。


すると、最初に現れたのは赤い角帽子。
毛布を全部剥がすと、そこには・・・

すぅすぅ寝息を立てて眠る藤崎の姿があった。


「・・・・・。」



ソファーの下をチラリ、と見てみると、
床の上に携帯が落ちていた。

多分、さっきの物が落ちた音はこれだろう。

改めて藤崎のほうを見ると、藤崎は幸せそうな寝顔をしていた。
口からヨダレが垂れて筋になっている。



・・・・・なんだかムカつく。


こんな所で気持ちよさそうに寝てるとは!
この愚か者め。

僕はふと、悪戯をしてみたくなり、
藤崎の頬っぺたをギュッと軽く抓ってみた。




「・・へへ・・・」


しかし藤崎は、痛みなど感じず、
夢の世界で何か嬉しい事でもあったのかニヤニヤ笑ってる。


締まりのないアホな顔になっているし
ますます腹が立ってきた。
思い切り叫んで起こそうと、僕は藤崎の
耳元に口を寄せる。

これで藤崎は一発で目が覚めるだろう。
よし、いくぞ。


「ふじさ「・・・ば・・・・き・・・」


ーーえ?今何て、言ったんだ?


何かを言ったのか聞き取れず、僕は
藤崎の顔をじっと見つめる。
さっきとは違って、何やら悲しいような
複雑な顔になっている。

すると、突然藤崎が僕のシャツを掴んできた。

藤崎の手を離そうとしても、寝ぼけてる割には
意外と力が強く、なかなか離さない。


「おい、藤崎?いい加減離せっ」
「好きだ」



ーーーー好き・・・?


寝言だとは分かってるけど、
ハッキリとした、凜とした声。







気が付いたら、僕は。

シャツを握る藤崎の手を、剥がすのではなく
ぎゅ、と握っていた。

藤崎の手はあったかくて、その温度が
何故か心地良く感じられた。





さっきまではイライラしてたのに。
さっさと起こして、説教しようと・・・思ったのに
怒りが何故かどっかへ消えてしまった。

何だろう、このモヤモヤする気持ちは。




(・・・・・藤崎。早く、起きろ。)












ーーーーーあとがきーーーーー

二回目の小説です。
これはちょっと藤→椿な感じかも。

藤崎寝てばっかだ・・・´・・`)
椿は起きるまでずっと手ぇ握ってあげれば
よいよw←


 

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