小 説

□花と君
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花と君


今日は生徒会の仕事がなかったので、
僕は教室の窓際で本を読みながらぼーっとしていた。

昔から本を読むことが好きだったので、すごくリラックス
出来るし落ち着く。仕事が休みだと何もすることがないが、
たまにはこういうのもいいな、とふと思った


一枚ずつページをめくっていき、本の内容に
没頭していたその時


何やら窓の外が騒がしくて僕はふと窓から覗き込んだ。
すると、校庭で生徒たちがぎゃぁぎゃぁふざけながら
走り回っているのが見えた。

こんな眩しい太陽の下で走り回るなんて、よっぽど元気が
いいんだなと思った途端、僕は目を疑った


よくよく見てみると、眩しく輝く太陽のようにーーーー
ゴーグルのついた真っ赤な角帽子を被っている人物がいる。





あれは・・・もしかして。


「ーーーー藤崎?」




いつもばったり会っては、喧嘩になる厄介な相手。
ぐうたら遊んでばかりのスケット団の部長である、あいつ。

藤崎はギャハハハハ、と馬鹿みたいに笑いながら
友達の鬼塚や笛吹と追いかけっこをしている



ああ、またあいつらかーーーー
僕は呆れてため息が零れた。

藤崎のやつ、後ろ見ながら走ると転ぶだろう。
ちゃんと前見なきゃ



注意しようと思い、窓を開けて顔を出した瞬間ーーー




「ぐわっ!!!!!」


ズジャァーーー!!と砂埃を立てながら、
藤崎が前のめりになって盛大にすっ転んだ。


一瞬の出来事に僕はびっくりして思考が止まってしまった。



傍らで心配そうに鬼塚らが藤崎に近寄り、声をかける。
しかし藤崎は普通通りに立ち上がり、砂が着いたひざを
パンパン、と手の平で払った。


そして三人とも顔を見合わせると、急に笑い出した。



「何やねんボッスン!!いきなり転んだから心配したでー!」

「わりぃわりぃ、後ろ見ていたもんだから」

『怪我は大丈夫なのかボッスン』




笛吹の問いに藤崎は全然平気だぜ!と馬鹿みたいに
顔をくしゃくしゃにさせて笑った。




・・・少しでも心配してしまった僕がなんかバカみたいだ。

ーーーーえ?何だ?あいつは天敵なんだから、別に心配なんて・・・




「あ!椿じゃん!何してんだお前アホみたいな顔して」



ふと僕の耳に入った、嫌なくらいリアルな声

ハッとして視線を戻すと、藤崎がこちらをじっと見ていた。
しまった、気づかれたか・・・!!

慌てて窓から引っ込もうと思ったが、何故か僕の身体は
硬直したままだ



不思議そうな顔で僕を見上げる藤崎は、突然
腕を大きくぶんぶん振りはじめ、おーーーい!なんて叫んでる。




「そこで何してんだーーー!?」


藤崎の馬鹿みたいな大きい声に僕はしかめっつらになり
手に持っていた本を見せる。


すると、藤崎は納得したかのようにああ、と頷いた


そういえば怪我はどうなのだろうか、と気になり
たまたまポケットの中に入っていた紙とペンを取り出し
さらさら、と文字を綴った

そして再び手に持って藤崎に見せる。





『怪我はどうだ』



遠くて見えづらいのか、ジッと見つめる藤崎だったが
漸く理解出来ると腕を使って大きくマルを作り、




「大丈夫だ!心配するなんて珍しいなー!」



と、またもや大きな声で叫んだ。
やめろ、そのデカい声。迷惑になるだろう・・・

すると藤崎が何かを思い出したかのように「あ!!」と
間抜けな声を出した。

そばに立っていた笛吹に近づいたかと思うと、
笛吹が背負っていたリュックサックの中から白い袋とソフトボールを
取り出す。



何だろう?と僕は不審に思うと、僕の真下まで歩いて来た。





「椿!!いいもん見つけたからこれ、お前にやる!!」



一言言い終えると、袋にソフトボールをヒモのようなもので
くっつけ、バンザイする形で高く高く僕のところまで投げてきた。


高く投げられたソレは、僕のところまで届くと
慌てて両手で捕らえた。

何だろうと思い、白い袋の中身を覗いてみるーーーーーー









すると、そこには真っ赤な・・・・僕と同じ名前の



ーーーーーツバキという花が。








ハッとし、藤崎のほうを見てみると、何故か彼は
恥ずかしそうに頭をぽりぽりと掻いていた


「ーーその、たまたま見つけただけだからな!」

とうるさいくらいに一番大きい声で叫んだ。



そしてそっぽを向いてしまった彼に、鬼塚が近寄り
今度は鬼塚がおーーーい!と僕に向かって叫ぶ




「ボッスンのやつ、ソレ見つけた時ツバキって綺麗だなーって呟いていたでーーー!!」






ーーーえ、今なんて・・・・?

何だかよく分からない感覚が僕を襲う



可笑しそうにケタケタ笑う鬼塚に真っ赤になりながら
バーカバーカバーカ!!!もう知らねー!!と叫びながら
藤崎は全力で走り去ってしまった。

それにつられ、鬼塚と笛吹も追うように走り去った






ただ、ぼうっとしていた僕は再び真っ赤なツバキを
ジッと見つめる


まるで・・・・馬鹿みたいに笑う太陽のような、アイツの笑顔に見えた。





「・・・お前にやる、か。」


どくんどくん、と脈打つ心臓がやけにうるさくて
僕は窓から引っ込み、大きなため息をつく。


照れ臭そうにする、藤崎の顔が忘れられなくて
僕はツバキにそっと笑いかけた。








ーーーーあとがきーーーー

うわぁ!なんだこの・・・甘酸っぱい奴ら!!←
読み直してみたらちょっと恥ずかしくなってしまった笑
ちょっと二人の性格が掴めていないけど;

からかうヒメコとか素敵ですねw




 

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