小 説 2

□時を越えて 3
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「ちょっ・・・何だテメェ!離せよ!!」

「暴れても無駄だ。大人しく城までついて来てもらうぞ!」

「城!?何言ってんのお前?ふざけてんの?」


肩を掴む手をパシッ!と強く払いのける藤崎。
目覚めたかと思ったらいきなり掴まれるわ、怒鳴られるわで
藤崎は眉間にシワを寄せて相手を睨んだ


「ふざけてなどいない。今まで散々逃げられたが今回は大人しく
 捕まっていろ竜助!」

「・・・・はぁ?竜助?俺、祐助なんですけど」

「とぼけても無駄だ」

「なっ!とぼけてんのはテメェだろ!何ワケ分かんねぇ事言ってンだ。
 侍みてぇな格好して・・・時代劇ごっこか?」



藤崎の言葉に相手はますます鬼のような顔に変化し、
腰に装着していた刀を素早く抜き取り、振りかざすと藤崎の首ギリギリの
ところで止める。

それにヒッ!!と声を引っ込んで藤崎の額に冷や汗がぶわっと溢れた。



「私を侮辱したら許さんぞ」



「な、なんやコイツ!!危ないやないかっ!!」

『ボッスンに何をする』


何かヤバイ、と危機を感じた鬼塚と笛吹は藤崎を後ろに引っ張り
守るように前に立ちはだかった。


「何やの、アンタ!刀なんてーーていうか振蔵から借りたんかそれ」

「何だ貴様は。借りてなどいない!これは父上から授かった大事な刀だ」

『副会長!どうしたんだ?いつもと違うな』

「ふくかいちょう・・・?なんだそれは。食べ物か?」



ーーーー間。




思いも寄らない発言に藤崎ら全員はハァァ?と間抜けな声を出した。
鬼塚と笛吹の後ろに隠れていた藤崎は二人を横に退かすと、
目の前の彼に近寄る。


「なぁ・・・お前大丈夫か?もしかして記憶とか吹っ飛んだとかじゃねーだろうな?」

「何を言っている。記憶はちゃんと残っているが?それにしても、
 貴様らおかしな格好をしているな」

「えっ?ちょっちょっと待って!これ制服なんだけど」

「せいふく?着物の一つか?」



だめだ何言っても無駄だ、と藤崎は頭を抱えてあれこれ考えを巡らせる。
どうにも喋り方も古いってか堅いってか、まるで本物の侍と喋っているようで落ち着かなかった。


その時ハッとした。
池の中から現れた理由を聞いた方が分かりやすいかもしれない。


「そうだ!えーっと・・・ちょっと聞くけどさ、お前何で池ん中にいたんだ?」

「何でって・・・竜助、貴様を追い掛けていたら何故か池のそばにいて、
 それで捕まえようとしたら突然池の中に飛び込んでしまったではないか」


その後、自分も飛び込んで探したら気を失って、気が付いたら
ここにいたわけだ・・・・と続けて彼は話した。



「なるほど。ヒメコ、スイッチ!」

「『何だ?』」


「ーーーーどうやら、コイツが言うには・・・俺に似た『誰か』を
 追い掛けていたらしい」

「えっ!?ボッスンに似たヤツ?何やそれ」

「地震が来たあと、池の底が無くなったってのもおかしな話だけどな」


藤崎の『地震』という単語に反応した彼は、藤崎の腕を掴み、
「やはりアレは地震だったのか?」と話した。


「そうだよ。すげーグラグラ来てさ・・・俺達さぁ池の掃除してたんだ。
 そしたらさ、地震が来る前は何とも無かったのに来たあと突然、
 池の底がポッカリ無くなっちまったんだよ」

「そのあと、コイツが浮かんで来たってわけやね」



『ーーーもしかしたら、タイムスリップというやつでは?』




笛吹の発言に、藤崎はちょっと待て!と抗議の声をあげた。

「そんな漫画みてーな話ねぇだろ?大体さぁこいつ・・・」

『いや、話し方も服装もどう考えても古いじゃないか。
 ただ・・・確信が持てるものは、彼が持っている刀だ』


そう言うと、笛吹は自分たちを見ている彼に『出身地は?』
と神妙な顔で質問を投げた。



「江戸だが・・・」


「江戸ぉ!?ちょっマジで」

『ふむ。じゃぁ名前を聞いてもいいかな?』

「名乗るならまず自分のほうから名乗るものだぞ?」

『すまん、俺は笛吹和義っていう。通称、スイッチとも呼ばれている』


スイッチ?おかしな名前だな、と彼は眉間にシワを寄せる。
そしてひとつため息をつくと口を開いたーーーー





「名は、椿 剣之介と申す」









ーーーーーーあとがきーーーーーーー

やっとボッスン達との会話シーン!
最初は剣之介の一人称を「僕」にしようと
悩んでいたけど、それじゃ現代っぽいし
被っちゃうしね・・・というわけで「私」に。

あれー侍って「私」使うんだっけ?笑(おい



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