寒くて寒くて
もうこのまま死ぬんじゃねぇかってリアルな死を感じた



暗い路地に倒れ込んだまま体は指一本動かなくて
人形みたいに冷たくなってる

どうしようもねぇ絶望にゆっくり目を開けば


そこは真っ白で冷たくて
ホント天国かと一瞬思った





だから


目の前に立つコイツは
きっと俺を迎えに来た死神かなんか

楽になれンならどこでもいい



そう思って目閉じたのに
氷みたく冷たくなった俺の手に重なったのは微かな暖かさで

握られた手がドクドク言ってる気がした







『まだ死ぬたくない』


地べた這って生きてきて
今更そんな風に思うなんてホント図太い神経してやがる

















恋文















感じたことない暖かさがして目開ければ
視界に写った高い天井

慣れない柔らかさのある布団
枕元にある薬と包帯





助かった

つーか助けられた






俺なんかに手貸したって何にもならないのに
金持ちの気まぐれか

素直に感謝出来ない自分の性格の悪さに少し笑えるけど


動かした腕はまだ痺れてて
碌に起きあがれない体が憎い




小さく舌打ちすれば
それと同時に奥の襖が開いた

成り金のババアか年寄りのオヤジか
そんなもんばっか想像してたのに長い裾引いて部屋に入ってきたのは


俺の予想を180度変えた














「起きたか?」


「…アンタ、」







目が合った瞬間、自信満々に歪んだ口元

後ろで結んでる長い髪


オーラっつーか
俺なんかが簡単に触れられない様な気品みたいなもんを感じて

息が詰まった





ゆっくり布団の傍に座る仕草さえなんとなく惹かれて
厚ぼったい唇に塗られてる趣味の悪い真っ赤な紅

視線が俺を射抜く度、心臓がうるさい



部屋持ちってことはそれなりに売れてんだろうし
コイツの持つ雰囲気は今まで見てきた女とは全然違った







『気安く触るな』




そう言われそうな強い目に
何も言えずに口を閉じたままただ大人しく言葉を待てば

緩んだ顔が俺の額に触って笑った




助けてくれたのはコイツだ

でもなんで
高嶺の花みてぇなアンタが俺みたいなドブネズミを


気まぐれだってなんだって
この部屋に俺を入れること自体騒ぎになってもおかしくないのに

そんなリスク背負う意味が分かんねぇ
















「熱下がったな。もう大丈夫やろ」


「…なんで、」







なんで助けた



掠れる声でそう聞けば
薄く笑ったソイツは何言わないで目を閉じて

血みてぇに真っ赤な着物引いて
さっさと部屋出てっちまった






なんかあれば言え



命令に近いそんな言葉しか吐かなくて
答えが返ってきた『葵』って名前とここに居ていい、ってこと



プライド高そうな目が
俺を見て一瞬伏せたのも

どっか悲しそうに見えたのも全部、運命なんて言葉で片づけられたら楽なのに














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オフ本では全18ページ予定
れ葵花魁パロ

最後なので逃げる様にドエロにするよ(^O^)/







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