短編
□7万打御礼夢
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「あぁ〜ん!!黒い羽根のお方!!どこに行っちゃったんですか〜」
戦場に不釣合いな可愛らしい声が下方から聞こえる。
身を隠した木のに寄りかかり、はぁ、と思わず溜め息をつけば、頭上でクスクスと笑う声がした。
「あの子、呼んでるよ?へぇ!可愛い子じゃない。よっ!色男!クスクス」
言葉の代わりに声のする方へクナイを一本投げれば、わざとらしい「わぁ!」という声とともに
一人の忍が目の前に降り立った。
「もう!危ないでしょ!!」
そう言いながらも顔は笑ったまま指でくるくると俺が投げたクナイを弄んでいる。
「いいねぇ、恋せよ乙女!って感じ?羨ましいわぁ・・・・・・ほんと、羨ましすぎて」
ニコニコと笑って下方で自分を探す少女を見つめていた忍の目から、すっと光が消えた。
「殺っちゃいたいくらい」
もう一度、はぁ、と溜め息をついて俺はすっと忍の背後に回った。
背後から己より一回り以上小さな体を抱きすくめる。
「あの子、私と違ってキラキラしてる。戦場に不釣合いよ、あの子。屍の海より花畑がお似合いだわ・・・
ねぇ、男ってああいう子に癒されるんでしょ?・・・小太郎もいつかはほだされちゃったりするのかしら?」
腕の中で小さく忍が震える。まったく、こいつは・・・
くるりと体を反転させ、顎を掴んで無理やり上を向かせれば、
忍は目の端に涙を溜めて、白くなるまで唇をかみ締めていた。
『ばか』
唇をそう動かせば、「馬鹿ってなによ!」と睨まれた。
「・・・私だって、私だって日の光の下で女の子してたかったわよ。普通の女の子で・・・普通にあなたに恋して・・・安らげる場になりたかった」
ふっと目を反らしてぽつりとそうつぶやくと、忍はそのまま黙り込んでしまった。
あぁ、ほんとうに、馬鹿なやつだ。
俺が惚れたのは、日の下で笑う女じゃなくて、闇夜で舞うお前なのだ。
俺が安らげるのは唯一、お前を感じている時なのだ。
くい、と掴んだ顎と体を引き寄せ、唇を重ねる。
何度も、何度も、声にならないこの気持ちが、絡み合う熱と共に届くように。
くちゅり、と音を立てて唇が離れる。
『俺を満たせるのはお前だけだ』
そう、唇を動かして伝う銀糸を指で拭ってやれば、
愛しい忍はようやくふうわりと柔らかな笑みを見せた。
=======あとがき==========
えー、どうでもいい裏設定ですが、
このヒロインちゃんはトリップしてきた女の子です。
トリップ後忍教育を受けて、小太郎の部下として北条に仕えてる設定です。