Unusual you

□Unusual you
1ページ/63ページ

夜明け前 …外科医当直室…








ブーン



耳障りな音は冷蔵庫

小さいくせに

古いからか

周りが静かだからか


「…うるせぇ」


眠るのはとうに諦めている

いつものこと


例え眠れたって直ぐに起こされんだから

たまに眠ってしまって、院内専用の携帯を鳴らされて目覚めるのは嫌いだ


あの何とも言えない脱力感

壁に掛けてある時計はもうすぐ五時を指そうかというところ

最後の呼び出しからまだ三十分しかたっていない


「静かだな」

見上げたカーテンのない窓の外は白々としている


「大野先生」


扉の開く音

カチ

鍵のかかる音


あ、くそ、忘れた


(…鍵…)

先にかけとくべきだった


「起きてるでしょ?」

「………」

こういう時は寝たフリに限る


「先生?」

ギシ


スプリングの軋む音

揺れるくたびれたマットレス


「分かってるよ、起きてるでしょ?」

「わ」

捲られた毛布


身体にかかる人ひとり分の重み

「ほら、起きてる」

「ん〜〜〜」

重い、と振り返った顔を固定され


唇を塞がれた


次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ