すた☆だす 2nd Season

□第5話「スマイルメイカー」
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〜つばめ視点〜

陵桜学園に入学してから約一ヶ月。様々なことに慣れてきた。

まずは「夢見荘」での生活。
管理人の海崎さんは夜中にこっそりとギターを弾いている。普段なら煩いとキレるところだが、その音色が何処か悲しそうで、いつも演奏を途中で辞めてしまうので、気になってしまうのだ。
はやと先輩に聞いても、

「俺も詳しく知らないけど、触れてやるな」

の一点張りである。とにかく、夢見荘のルールとして海崎さんにギターの話は禁句らしい。
そのはやと先輩は、俺より貧しい生活を送っていた。
食事はパン屋に分けてもらったパンの耳とスーパーで安売りしていた食料、そして雑草。
そう、雑草である。何でも、食用に出来る雑草を調べる為だけに図書室を利用したらしい。今では先輩専用の畑とも呼ぶべき収穫ポイントがあるらしい。

「いや、雑草て……」
「天麩羅にするとイケるぞ」

こんなこともあり、塩粥と天麩羅は先輩の唯一の得意料理だそうだ。今までよく生きてられたな。
他にもテレビも据え置きの電話もラジオもなく、電化製品で所有してるのは冷蔵庫と炊飯器、携帯電話のみ。
冷暖房もなく、真夏と真冬は死ぬ思いで過ごしたという。何なんだアンタ。
仕送りはないのかと聞くと、

「ない。今までも、これからも貰う気はない」

とキッパリ言われてしまった。真剣な口調から、恐らくこれも訳があると思われる。今はまだ聞く時ではない。そう判断し、俺ははやと先輩への言及をやめた。
すると、はやと先輩はおもむろにタッパーを取り出す。

「あ、残飯あったら分けてくれ」
「アンタにプライドはないんですか」
「金を要求しないのがプライドだ」

何てちっぽけなプライドだ。何時か先輩が野垂れ死なないか心配になってきた。
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