すた☆だす 2nd Season U
□第39話「離れ行く道々」
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〜はやと視点〜
窓から射す日の光が、やけに鬱陶しく感じる。
席について昼飯の菓子パンを貪る俺は、始まったばかりの高校生活に気怠さを覚えていた。
母さんを亡くし、家を出て海崎さんの世話になりながら、俺はこの陵桜学園に通っている。これが母さんとの、最期の約束だったからだ。
けど、学校生活の内容については約束をしていない。勉強なんか身に入らず、今は授業をサボって、ベストプレイスの屋上で空を見上げるばかりになってしまった。
「もし、翼があったら……」
あの空に、母さんのいる空に昇れるんだろうか。
叶わない幻想と、後悔だけを胸に、俺は独り虚しく日常を送っていた。
「あのー」
そんな時、ふと横から声を掛けられた気がした。
何となく視線を向けると、クリーム色の短髪に藍色のタレ目、整った顔立ちの男子が俺の方を見ていた。
コイツは、えーと……あぁ、思い出した。同じクラスの、檜山みちるだ。
学年一のイケメンで金持ちのお坊ちゃん。加えて、文武両道の優等生。コイツが有名になるのも無理はない。
が、その有名人が俺なんかに話し掛ける道理が分からない。
「何」
気怠く、俺は返事をする。
別に俺は有名人に興味はない。俺みたいにつまらない人間とは天と地ほどの差があるからな。
「うん、さっき授業中に出てたよね? 何処行ってたのかなって」
みちるは俺の返事に大きく頷くと、たどたどしく尋ねて来た。
あぁ、つまりは授業をサボった俺を叱りたいのか。優等生がご苦労様なことで。
「屋上で寝てた。それが?」
俺は悪びれることもなく、教えてやった。
俺が屋上で寝てても、みちるに損がある訳でもない。コイツが何度注意したところで、俺もそれを正すつもりもない。
つまりは何も変わらない。それだけだ。