ショート

□真
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「ナマエです。遅くなりました」

ドアに二度ノックして、相変わらず返事がないカカロットくんの病室にお邪魔した。

しかし、いつも通りだったのはここまでで……


「……カカロットくん?」


ベッドは脱け殻状態。
目を覚ましたと言うのだろうか?



ゴトッ―


風になびくカーテンが、机に置いてあった何かを倒した。
私はそれを、写真立てを直し、衝撃的なものを目にする。



「悟空くんが……3人?」


そこに写っているのは、ふてくされてそっぽを向くお父様と、嬉しそうに笑うラディッツさん。そして、同じ顔、同じ髪型をした小さな悟空くんたち……。
いや、1人だけ肌の色が違う子…となればこれはターレスさんだろうか?
じゃあ残る2人は悟空くんとカカロットくん…。



「(仲が良かったのか)」



ターレスさんの言葉を思いだし、この幸せそうな家族を壊してしまった張本人が私だと言うなら、心が折れそうだ。



「(預かったのも写真なんだ)……うそ?!」


悟空くんから預かった、ラディッツさんからの封筒。
それには1枚の、砂場で遊ぶ少年少女の写真が入っていた。
こちらに向かって満面の笑みでピースをする2人。
その1人が、私。
ではもう1人は…。








「ターレスさんじゃない違和感……これだったんだ」





何度か注意をされたが、それでも私は走って屋上を目指した。そこがあの人のお気に入りの場所だから。



「…カカ…ロットくん…」



ベンチに座り、遠くを見つめる金髪がこちらに振り返った。
しかし反応をあまり見せないので、私は恐る恐る近づく。
「…だれ?」なんてベタなこと言ったらとりあえず殴っておこう。って思ってたのに、すっと右頬に手が添えられ、二度撫でると



「ごめんな」



小さく、そう言った。





「ずっと心配したんだよ…私を守ってくれるのは嬉しいけど、カカロットくんがいなくなったら…」



カカロットくんの手を握り、その体温を右頬で感じた。
その言葉に、行動に、一瞬驚いた彼だが、優しい微笑みを見せてくれる。私の大好きな、カカロットくんの笑顔。

「目を覚ましたのはいいけど、正直人とは会いたくなかったんだよな。でも、最初に会えたのがナマエでよかった」
「驚いたよ。病室に行ったら居ないんだもん………あそうだ!話し変わるけど、これに写ってるのカカロットくんだよね?!」
「華麗にスルーかよ…………つかこれ、なんでナマエが?」
「ラディッツさんから渡されて」
「あのバカ兄貴」
「私があの日、一緒に遊んだのは…」
「………オレは、一度もナマエを忘れたりなんかしなかった」





あの日の記憶が、全て鮮明に、はっきりと。例えるならば、探していたピースが見つかり、完成したジグソーパズル。


「あっ」


緩んだ手から、1枚の写真は風に飛ばされて私はそれを追いかける。

けれど再び手に戻ることはなく、何故か私はカカロットくんに後ろから抱きしめられていた。



(やっと捕まえた)

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