モノクロ

□03
1ページ/1ページ




百合にハンカチを返そうと思って早1年。

あれから百合に一度も逢っていない。


あの海岸に行けばまた逢えるかと思ったけど百合は現れなかった。



名前しかしならない人に、もう一度逢うのは不可能なのだろうか……。


「赤也!気がたるんどるぞ!」
「すみませんッス……」





ねぇ百合



あの日に百合と出逢えたから、今俺は立海のエースなんだぜ。

だからこの事、一番に伝えたかったのにな……



「おーい真田ー。来てやったぞー」
「安藤……すまないな急に…」


へー、あの真田副部長が女の人…と…


「これでいいんだよね」
「わざわざすまない」
「じゃあ私はこれで」
「気をつけて帰れよ」
「おう!」





見覚えのあるあの顔

そしてあの喋り方






「真田副部長!あの人……だれですか?」

「あの人……安藤の事か?」


「下の名前は!?」


「…百合だ。それがどうかしたか?」



見つけた……



不可能だと思っていた出逢いだったけど、






きっとこういうのを














運命の出逢いって言うんだ














「百合!!」



無我夢中で百合を呼び止める。

名前を呼ばれ振り返る彼女は、1年振りに見る顔だ。




「百合……だよね…ハンカチ…これ…」


いつでも返せるように持ち歩いてた百合のハンカチ。

でも百合は、ぽかんと気が抜けた状態で俺を見ている。


「えーっと……どちら様?」


どちら様って…

「丁度1年前、アンタに逢ったんスよ。その時ハンカチ借りて……」

そう伝えると、百合は腕を組み記憶を探り始めた

「そんな事あったようなないような……」
「あったんです!このハンカチが証拠!!」

「…んー………あ……あー……青也君?」
「赤也です!」
「おー、レッド君か」


なんなんだよこの人……

あの日逢った時とちょっと変わってる。
雰囲気は同じなのに。


その時、百合は何か思い出したようで、いきなり目を見開き俺の肩をバシバシ叩いてきた。


「海岸で打ち上げられてたワカ…子だよね!覚えてるよレッド君!」


今ワカメって言おうとしたよなこの人。
つか俺はレッド君で決まりなのかよ。
まぁ青也と間違われるよりはましだけど。


「はい。確かに受け取りました。わざわざありがとね」


百合がハンカチを受け取るとさっさと歩き出すので、俺は慌てて肩を掴み目を合わせた。

何が起きてるか状況が把握できてない彼女に、今言うのは困らせてしまうかもしれない。

でも俺の想いは、今伝えなきゃいけないんだ。



「俺、あの日から百合の事がずっと好きなんだ……だからその…俺と……付き合ってください!!」



自慢じゃないけど、告白された事は何度もある。
でも自ら告白したのは初めてで……


怖くて早くこの場から逃げたい。

いくら百合がぽかんとしてても、返事を聞くには心の準備が……



「………それはつまり、私がキミを好きになれと」

「好きになってくれたら幸せッス」


百合に愛されるとか、舞い上がっちゃうよ。

でも、百合が出した言葉は思ってもいなかった事で…


「んじゃ無理。私、人を好きになれないから」

「どおゆう事ッスかそれ!?」
「そのままの意味です。それに私帰りたいし」

レッド君だって早く戻らないと真田に怒られるよ。
と、そう付け足す百合はよっぽど帰りたいらしい。
でも俺は納得出来ないし諦めのいい人間じゃないんだ!


「じゃあ…好きになってもらう努力したら……百合に好きになってもらえますか?」

「無駄なことしない方がいいよ。私は人を愛せない性格なの。いずれかキミを傷つける事になる」

なんだ……


それって別に、俺は拒絶されてる訳じゃないじゃん。

しかも百合は俺を……


「ならその性格俺が治す!!
百合に振り向いてくれるよう努力もする!





だからその時が来たらまた……告白します」


愛する人に愛されたいと想うのは当たり前の事。

だから俺は努力するんだ。



「………バーカ」



顔を赤らめてそう言われたら、もう俺はやるしかない。


走っていく百合の背中を見つめ、誓う。


絶対に百合を堕とす。
だから、覚悟しててよね。














(その後、真田副部長に怒られたのは言うまでもない)

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ