モノクロ
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夏休みは少しずつ進み、宿題も少しずつ進み始めた頃。
王者立海は、真田の言ったとおり普通に関東大会の決勝戦まで駒を進めたらしい。
しかも相手はあの青学ときたもんだ。
となれば、残念ながら私は応援に行くことは出来ない。
でもここ。幸村が入院している病院には来ちゃいました。
意外と立海の制服を着た生徒が目立つのだが、まぁ幸村ってモテるしね、それは仕方ないとして。
「なぜこの部屋に誰も居ないんだい?」
何度確認してもここは幸村精市の病室。
おかしいとずっと思っていると、マナーモード中の携帯が震えだした。
[mail]
from:銀髪詐欺野郎
sub:無題
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今屋上にいるぜよ
-end-
屋上いるぜよ。ぜよ……ぜよ…
一々ムカつくよねこの人って。
やっぱり私、この人が苦手なんだな。
携帯を仕舞い、渋々屋上へと階段を上りドアに手を掛けると、向こうから賑やかな声が聞こえてくる。
ドアを開くと、楽しそうに会話をしているテニス部の人たちが…
「安藤、来てくれたんだ」
手術前だというのに、顔色も良く、入院前と同じ笑顔を見せる幸村。
その隣に、多分見舞いに持ってきただろうケーキを頬張る赤髪の丸井が座っている。
「真田が屋上に居ること教えてくれないから困った」
「すまなかった」
「なんじゃ、俺のメール見て素直に屋上まで来たんか?珍しいの」
「そりゃ、他に行く所がなかったし」
確かに、もし銀髪のメールが嘘だったら私は無駄に階段を上っていたのか。
そこら辺はまったく考えていなかった。けど文句を言いながらも、私は素直に階段を上ったんだよね。
私がこの詐欺師野郎に対する気持ちって……
と、丁度その時だった。
勢いよくドアが開き、あの柳が焦りながらトラブル発生と真田たちに伝える。
慌てて病院を飛び出すみんなに釣られて、それに内容もレッド君が絡んでいたので私も行くことにしたけど、流石関東大会の決勝へ進む実力をお持ちで。徐々にみんなが小さくなっていきます。
そんなみんな着いていけるはずがない私に気を遣ってくれたのか、銀髪野郎が手を引いてくれてそれなりに走った。
目的地はレッド君の通うテニススクールらしい。
「赤也の目が充血したそうだ」
柳の言葉に、一瞬空気が凍りついた………気がした。
レッド君に何かあったのか。そう聞きたくても
「安藤、大丈夫か?」
「うっ……うん…っ…」
銀髪の……仁王のスピードが…。
私の為に少し速度を遅くしているんだろうけど、それに合わせて走るのが精一杯で、聞きたい事が聞けなかった…。
(それと、微かに震えている仁王の手…)