小説

□治療は唇で
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「……っ…あっつ!」



久しぶりの日本国での朝食。
味噌汁を口に含んだ途端、黒鋼は反射的にお椀から口を離した。

それを隣で見ていたファイが、黒鋼の顔を覗き込む。


「黒様、もしかして猫舌?」

「えぇ、そうなんです。猫舌なんですわ。昔っから」


押し黙った黒鋼に代わり、知世姫がにこやかに答えた。


「へぇ……昔から…」


静かに火花を散らすふたりに、黒鋼は首を傾げた。


「おまえら、何睨み合ってんだ」

「「別に」」


二人に、にっこりと黒い笑みを向けられてビクリとする黒鋼だった。

舌がぴりぴりして顔を歪める。


「あー。舌火傷したなこれ」


その黒鋼の言葉にファイの目が光った。



「んじゃ、俺が消毒してあげるね」


「…!てめぇなにす…っん!!!」



そのままファイは黒鋼の着物の襟元を掴み、強引に引き寄せ接吻をかました。



「ひぃっ」



ばたーん


タイミング悪くお茶のお代わりを運びに来た蘇摩が、それを見て卒倒する。


「あらあら」


知世姫がのんびり言うのに、手慣れた数名の忍者が素早く蘇摩の体を抱き上げ運んでいく。



「…ふっ…ん…んくっ……」

「…………ん」



ようやく黒鋼との接吻に満足して唇を離したファイに、ふと疑問が浮かんだ。


「あれ?ところで天照さんは」

「どうせまた寝坊でしょう」


知世姫はずずーっと茶をすすった。


濃厚な接吻から復活を果たした黒鋼は、ぎっと二人を睨みつける。



「…っは…てめぇら!何普通に会話してやがる!!!」



黒鋼の怒声が響き渡った。




――紅い顔で息を乱して怒鳴ったため、何の意味も成さなかったが。




***end




日本国での黒様は総受けで。




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