小説

□明け方の祈り
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ここ最近は、よく眠れる日が続いていた。
朝までは熟睡してすっきり目覚める。
その繰り返し。


「……んん?」


カタン。

枕元に置いてある時計を指先に引っ掛けて引き寄せる。
見れば起きる時間の数時間前。

なんだか損をした気分だ。


「そうだ」


小声で言うと、少し体を起こした。

彼より早く目が覚めたのを良いことに、隣で眠る彼を見つめることにする。

カーテンの隙間から差し込む白くて弱い光に照らされた黒髪がきらめいた。


「……綺麗」


閉じられた瞼にキスをしたくなるが、抑える。

まだ見ていたい。


普段は眉間に皺を寄せて睨んでくる彼は、今は穏やかにすやすやと眠っていて実年齢よりも幼く見えた。


「かわいいんだから、も―」


髪の先をつんと突っつく。



と、その手を掴まれた。



「あれ?黒ぷー。起きちゃったの?」


むくりと起き上がった彼は目を細めて、眉間に皺を寄せる。


「俺が物音に気づかないわけねえだろ」


………え?


「それじゃあ、最初から起きてたの?!」


驚いて問えば、勢いよくそっぽを向かれた。


「寝たフリするなんて黒様いじわる―♪」

「うるせえ!!楽しそうに言ってんじゃねえよ!!」


朝から元気いっぱいだ。


俺は掴みかかろうとする彼の手を避ける。
楽しくて、笑いが止まらない。


心の底から笑うなんて、もう無いと思っていたのに。




ずっとこの日々が続きますように。




朝日に祈りを捧げた。




***end




ブログにてお題に挑戦したものです。

「明け方」と「音」がキーワードでした。



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