小説

□止まない雨
1ページ/1ページ




ベッドに腰掛けると、肩に手を置かれ、近づいてきた顔が首もとに寄せられる。

舌先で舐められてから、ぷつりと犬歯が食い込む。


「……ん」


痛み。
微かな痛み。

微かとはいえ、それは確かな感触だ。
相手が、俺に与えている確かなものだ。


まるで責めているようだった。




【なぜ生かした】と。




「随分と余裕だよね」

「何の事だ」

「こんな時に、考え事?」




口端に、吸い上げた血を僅かに残して、妙に熱っぽい視線を向けてくる。


「まあいいや。オレには関係ないし」


先程出来た真新しい小さな傷を指先が撫でる。
ぴり、と痛みが走った。


「ねえ。もう少し、いいよね」


再び口を寄せるファイを一瞥して、すぐに視線を逸らした。


「ああ」


俺は短く返事をして、窓の外を眺めた。






皮膚を灼く雨は止まない。






***end




吸血シーンをもっと見たかったよ小説でした。

首だと吸いづらいから手首だったのかなー、と思った。

「屈んで」とか言うと少し格好悪いので、ベッドに座らせてみました。




[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ