小説
□止まない雨
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ベッドに腰掛けると、肩に手を置かれ、近づいてきた顔が首もとに寄せられる。
舌先で舐められてから、ぷつりと犬歯が食い込む。
「……ん」
痛み。
微かな痛み。
微かとはいえ、それは確かな感触だ。
相手が、俺に与えている確かなものだ。
まるで責めているようだった。
【なぜ生かした】と。
「随分と余裕だよね」
「何の事だ」
「こんな時に、考え事?」
口端に、吸い上げた血を僅かに残して、妙に熱っぽい視線を向けてくる。
「まあいいや。オレには関係ないし」
先程出来た真新しい小さな傷を指先が撫でる。
ぴり、と痛みが走った。
「ねえ。もう少し、いいよね」
再び口を寄せるファイを一瞥して、すぐに視線を逸らした。
「ああ」
俺は短く返事をして、窓の外を眺めた。
皮膚を灼く雨は止まない。
***end
吸血シーンをもっと見たかったよ小説でした。
首だと吸いづらいから手首だったのかなー、と思った。
「屈んで」とか言うと少し格好悪いので、ベッドに座らせてみました。
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