小説
□ブログ拍手文
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「ねーねーねー黒様ぁー」
うるさい。
「ちょっと見てってばこれ!ほら」
俺は今忙しいんだよ。
読んでいるまがにゃんのページを捲りながら聞こえないふりを続けていると、ファイが不満そうな声を更に張り上げた。
「聞いてよ、黒鋼!!!」
思わず、びくりと体を跳ねさせて体を預けていた壁から身を起こした。
「あはは。いい反応♪」
「〜〜〜っっ」
普通な、しないだろ。
そういう冗談は。
東京での事がフラッシュバックして、頭を抱えた。
俺はなぁ、あれ、結構傷ついたんだからな!!!
「あれ?怒っちゃった?黒ぽん」
「ふん。別に怒ってなんかねぇ」
そうは言いつつ目を合わさない俺に、ファイは苦笑した。
「ごめんってば」
「…謝るような事したのか、おまえは」
「んー。まぁね」
「………」
わかっているのか、いないのか。
おそらくは、前者だろう。
「……で。何だって?」
「あー!そうそう見てこれ、凄いんだから。ほら!!茶柱!!」
……………。
「あれっ?違ったっけ。茶柱って言うんだよねコレ。ん?…あー黒たん何処行くのー?」
俺は居間から自室へ行き、乱暴に扉を閉めると鍵をかけた。
ったく。
返せ、俺の貴重な読書時間。
***
しょぼんと落ち込むファイの肩に誰かの手が載った。
全く気配が無く、気がつけなかった。
「?」
ファイが見上げると、そこに知世姫の笑顔があった。
「落ち込む必要はありませんよ」
「知世姫…」
「こんなこともあろうかと、用意してありますから」
ジャラ、と取り出したのは―――
「合い鍵です」
「さっすが知世姫!!」
「黒鋼はいじけると、すぐに自分の部屋に引きこもりますからね。これがあれば安心です」
ちなみに、気づかれて鍵を作り直されたとしてもその都度黒鋼に内緒で合い鍵を作らせているそうだ。
「ありがとうございます!」
「いえいえ。うちの黒鋼と仲良くしてあげてくださいね」
「もちろんですよー」
ファイは鍵を手にスキップで黒鋼の部屋に向かった。
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