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□2m
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「おい、お前ら運べ!」





台所から低い声が響いた。





タッタッタと規則的な足音が3つ。

キッチンに入るとと、そこにはエプロン姿の宗介。



今日の料理担当は宗介。


意外にも器用で料理の腕はいい。




そしてそれに続く意外や意外の翼。

人は見掛けに拠らないという言葉は彼のためにあるようなものだった。




新と恵は一度壊滅的な料理を作ってから、翼か宗介どちらかの手ほどきの元料理を行うようにしていた。






温かいオカズをテーブルに運び終えると、直ぐに4人がテーブルを囲う。





そして「いただきます。」と小さな部屋で四人分の声が並び、何気ない会話の中食事が始まった。





上京し、宗介は寮生活を送っていた。
さすが水泳の名門校ともあり、メンタルやヘルスケアは万全。

恵も水泳部であったが翼と一緒に住むという形となり寮に入っていなかった。


ただし、ケアは大事とのことで寮から近いマンションに一室借りていたのだ。


そんな皆と一緒に過ごせるよう新も双子と同階に部屋を借りた。



本日、寮母さんがいないということもあり4人揃っての夕食だ。



寮母さんが不在の日やオフ日はこうやって四人で食事することが多い。

最も新は汐兄弟といつもご飯を食べている。




会話はほとんど部活動について。




時々、オフの日に出かけようという話になるだけだ。



そんな日々でも青春全て部活動に捧げる4人は楽しんでいた。






「そう言えば、宗介体絞った?」




「言えれてみれば、確かに。」




「あ、ああ。まあな。」





「山崎は練習後のトレーニングメニューがメインといっても過言ではないですからね。」







「んなわけ無いだろ。」





「あーあ、羨ましい…。俺全く筋肉とかつかねーし。」





「馬鹿は何とやらって言いますからね。」






「はあ!?なんだよそれ!?」






いつものようにキーキーと翼が一方的な攻撃を始めたところで、それをBGMとして楽しむように新は宗介と会話を始めるのだ。





「水泳って筋肉も大事だけど脂肪がないとダメなんでしょ?」



「ああ。」




「大丈夫なの?」



「バッタ200泳ぎ切るにはこれぐらい必要なんだ。
ちゃんと計算してる。」




「そっか、凄いね。
でも無理はダメだよ?オーバーワークは選手にとって致命的なんだから。」





「わかってるよ。」




「あ、トレーニングの成果なのかな?最近、負け知らずじゃない?
やっぱりこっち来て正解だったね。」




「まあな、結果出さなきゃその意味ねえし…。
お前も結果出してるだろ?」







「うん…、出てるけどね…。
ホントはもっと飛べそうだし、もっと走れそうなのに…、何でかな?
リミッター付いてる感じあるから。
記録の伸びは悪いんだー。」





歯切れの悪い物言いの後「うーん、肉じゃが美味しい!」と話を逸らす。





こっちに来てから、新は、はぐらかすということを覚えた気がする。


何でも言い合っていたあの頃とは違う。






原因はわかっている。




凛しかいない。




ただ、彼もきっと事情があるんだと宗介は思っていた。



離れていてもわかる。





あいつも壁にぶち当たってるんだろう。




弱い自分を知られたくないのだろう。




ただ、弱い自分を見せれる奴にだけ見せてやって欲しいと思うところもある。




「1年に1通だけでもいいから欲しいな。」







ボソッと心から溢れ出た言葉を新の耳が拾った。





びくりと体を奮わせ、手をつけていたお箸を休ませる。





そして、視線を合わせると焦れ込んだ笑顔を見せるのだった。






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