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□8m
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「あの…、橘さんが好きです、付き合ってください…!」





「ありがとう、とっても嬉しいんだけど…。
俺、好きな人がいるんだ。」





叶うともわからないその想い人に思いを馳せ、何度女の子からの告白を拒否し続けただろう。


付き合うという選択だって出来たはずなのに。


どうしても、彼女と比べてしまうんだ。




包み込むような俺と同じ髪の色、優しく靡く長い髪、そして輝いた背中の翼。



あんな子他にはいない…。





今どこにいるのかもわからない。

手がかりは隣町に住んでいるということと、凛の幼なじみということ。



そんな一つの手がかりである、凛とも連絡をとっていない。

おまけに、隣町といっても広い。

それに高校が地元に行ってるとは限らないし…。





こんな状況下でも、俺はずっと想い続けた。




だから、再会したときは本当に嬉しかった。
叫びたかった。
抱きしめたかった。



そんな衝動を抑えて彼女と向き合った。


奇跡はあるんだと思った。






会話から、きっと凛と何かあったんだと感じた。

でも、…そんなこと俺には関係ない…。



俺は、俺自身に正直になるんだ。




連絡先を交換して、駅まで送る。

隣で歩いて会話する。
当たり前のことがとても嬉しかった。


嬉しかったんだ。



見送ったその電車をいつまでも眺めていられる気がした。






「おい、橘?」




「あ、望月くん!」



「やっぱり!てか、さっきの可愛い子彼女か?」




「うーん、残念だけど違うんだー。」




「え!?ほんとか!?
じゃあ、紹介してくれよ!めっちゃ可愛いじゃん!!」




「うーん、それはダメ。」



「うっ…、お前でもそんな顔するんだな…。
おっかねえよ…!
ま、そうだよな…、お前が女子といるの珍しいって思ったんだよ。」



「うん…、そうかも…。」




「いつから狙ってんの?」




「うーん、もう随分。
俺が小学生の時から…、かな?」




「ながっ!!!
よく一途でいられるな。」




「うん、あの子しかないかなーって思うんだ。」




「……橘がいつも告白されてる時に言う”好きな人”って、もしかしてさっきの子?」




「うん、そうだけど…。
なんでそんなこと知ってるの?」




「女子が噂しまくってんの聞いたんだよ。
橘に好きな人がいるって。でもそれは橘が優しいから断るための好日だろうなって思ってたけど…、ホントだったんだな。」





「まあ…、そうなんだ。」





「じゃあ、何で気持ち伝えないんだ?」




「伝えると…、あの子に悪いから…。」




「何で?」





「彼氏がいるんだよ。」






俺の返答に望月くんは止まった。
そして、一瞬眉毛をぴくりと動かすと乾いた笑いが生まれた。






「…お前…、諦めねえの?」




「諦める気はないよ。
むしろ、今日で戦闘態勢に入った感じかな?」





「その目やめてくれ…、おっかねえ…。






「そう?」




「自覚ないとか怖すぎだ…。
で、七瀬は知ってんの?」






「…わからないけど気づいてるんじゃないかな?
はる…、結構周り見てるから。」





「だよな、お前ら常に一緒だしな。
俺は別に無理やり彼女と彼氏を別れさせろって言わねえけど…。
気持ちはちゃんと伝えたほうがいいと思う。
後悔は一番良くないからな。」





「うん、ありがとう。
頑張ってみるよ。」





「七瀬にも協力してもらえよ。
んじゃあな。」






手を振って遠くなっていく望月くん。

彼の言葉には凄く重みがあった。



きっと彼は後悔した恋があるのだろう。






「頑張ってみるよ、僕ができることを。」






俺も明日のデー地プランを練りながら家路に足を向かわせた。






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