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□11m
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忙しく行き交う人々の中、二人は横に並んで話し込んでいた。



母親同士は気を効かせ二人きりにしてくれている。



そんな必要ないのに、と思うが今回はそれに甘えることにした。






「また、帰ってくるとき連絡してね。」





「うん、わかった。
帰省して、真琴くんに出会えてよかったよ。」





「そう言ってもらえると嬉しいよ。
…、それ持って行ってくれるの?」




「うん、大事だからね。」









鞄から少しはみ出している2つのぬいぐるみに目をやる。


それは真琴から貰ったシャチとカモメのぬいぐるみだった。








新は、もう少し真琴の希望に添える決意をした。




今まで凛が水で空を飛ぶように、新は陸で空を飛んでいた。





凛に依存していたのだ。




だが、よく考えると彼だけに依存していたのではないことに気づいた。




それは不安な時、辛い時、いつも一緒にいてくれたこの2つのぬいぐるみだ。





「私は今、凛のために飛ぶんじゃなくて、飛ぶ意味を探すために飛ぶよ。だから、ボールター頑張ってみる。」





「うん、わかった。
俺はそれを応援するよ。」




「ありがとう。
それと代わりって言ったらなんだけど…。
機会があったら、真琴くんも泳ぐこと初めて欲しいな。」





「……考えておくよ。」




「うん。じゃあ、行ってくるね。」





荷物を持ち、搭乗口へ。

それぞれの母親と真琴に見送られ、地元を旅立った。




あっという間の帰省だった。



目をつぶり意識を手放す。
気づくと飛行機は着陸態勢に入っていた。








ごった返す人の波。
この人の数を確認すると、こっちに来たのだと改めて痛感する。



荷物を持ち、空港のロビーに到着すると見慣れた人物が手を軽く挙げていた。






「宗介…!」



「よう。」




「よう、じゃないよ。なんで!?」




「お前の母さんから連絡もらったんだ。」




「そうなの…?あ…、でも部活…!」





「……今日は休みだ。」



眉を潜め視線を外し、ポケットに手を突っ込む。

本人は気づいていないかもしれないが、この仕草は何を意味するか長年連れ添ってきた蒼井には理解するのは簡単なことだった。







「……そう。」




しかし、あえて聞かない。


今はきっと触れないほうがいいのだろう。


自分の勘がそう働いた。





「じゃあ、今日は宗介と一緒にご飯食べれるね。」





「お前は食うか寝るかだな。」




「人間の欲求だよ、大事なんだから!!」




グイっと両手いっぱいに力をいれる。
するとその姿を見た宗介が、軽く笑い頭をガシガシと撫でてきた。




「な、何!?」




「いい顔になったな。」




「うん、心配かけてごめんね。」



「んなもん、今に始まったことじゃねえだろ。」




「それもそうだけど…。」





「ほら、貸せ。荷物持ってやる。」





「いいよ、見た目ほど重くないから。」




「いいから貸せって…、なんだこれ…。ぬいぐるみって…。」




「いいの!!大事なの!!!」




ムスっとする新に一つため息。
そして、何も言わずに荷物を持ち上げた。



その時の違和感、それは彼が嘘を付いている理由に繋がるのだった。






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