トレード02

□☆彡【valentine eve】
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2月13日………

今年も昨年と変わることはなかった………



【valentine eve】


玄関の呼び鈴が今日も鳴り、親がインターホンを取り上げる。
階下から俺を呼ぶ声が聞こえる。
そして、部屋の扉を開いて俺は階段を下りて行く。
これも………同じ昨年とも同じパターン………

玄関扉を開くと、頬を紅くした少女が立っている。
突き出した両手の先にラッピングされた小包がある。

『………ありがと。』

これも………昨年と同じ台詞か………もしかして

そんなことを頭に巡らせながら、
俺は右手を差し出した。

『………どう………致しまして………』

消え入りそうな小さな声と共に、
吐き出された吐息が宙に消えていった。
寒いのか、竦めた肩が震えているように見えた。

『何か飲んでく………?』

『ぃ………いらない』

頬を更に紅くした少女………緩く頭を振った少女の頬に黄金色のくせ毛がかかった。

『………それじゃ』

『あぁ………』

軽く小走りで道路に出て………振り返りもせず、自宅方面に向かう少女。

………終始………
真っ赤にしていた頬。
ま………この日しか見れない光景だな………

そう、ぼんやり考えながら、俺は玄関扉を閉め、鍵をかけた。



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