トレード02

□☆彡【valentine eve】
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階段を上がり、自室に戻る。
テレビの中に激しくスパークを光らせながら、
コントローラーを握り続ける友人。

『今年も頑張って作ってたよ………カガリ』

顔はテレビ画面に釘付け。

『ふぅん………』

俺はラッピングに手をかけた。

『ところでキラ………かなり外、冷えてきたぞ?』

『そう?でも、まだ帰りたくないんだよね………』

『………喧嘩した彼女か?』

俺の問いにキラは振り向き、俺の手の中のものに視線を投げる。

『いや………それ作ったときの後片付け手伝わされる』

『………………………』

ま………そんなもんか。

『今年はずいぶん時間掛けてたみたいだけど………どんなのなの?』

タイムボタンを押したキラが、俺に寄って来る。

『………余ったもの、お前も食べるんじゃないのか?』

『?………ボクも………?』

キラが怪訝な顔をする。

『………違うのか?』

『………ボクは食べないけどね、甘い方が好きだし………』

ラッピングをほどいた俺の手の中から、
キラは小箱を取り上げた。
蓋を開き、目を細めた。

『やっぱり、アスラン向きな感じのチョコだね』

『………』

俺は、腑に落ちない。
前日にバレンタインチョコを渡すってことは、
当日は本命がいるから………
それの予行練習みたいなもので………
このラッピングも練習。
中に入っているものも、形が崩れているものと思っていた。
それが………………………

『ま、去年は初めて作ったみたいだったし、失敗してたみたいだけど………』

………確かに、ちょっと形がいびつだった………

『でも、味はアスラン好みだったんじゃない?』

………確かにそうだった。
甘みがなく、かなりビターだった。

『おかげで、不思議な甘さのケーキに一週間もだえたよ』

『………すまんな』

綺麗に形の整えられたチョコレートが並んだ小箱を、
俺は覗き、ゆっくりと視線をキラに向けた。
口を開くと出てしまう言葉を、必死に飲み込みながら………

『何か言いたそうだね、アスラン』


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