海賊の誘い
□君の姿
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ある晴れた午後。
船尾にはベンが座って本を読んでいた。
普段から人影がない船尾は、時間帯的に船員達のフリータイムと重なっているのか静かであった。
聞こえるのは心地良い波の音。
読書をするのにこの騒がしい船の中では最適な環境だ。
静かに文字に目を通していると、鮮やかな赤髪の男が俯きながらベンのほうに近づいてくる。
名高い赤髪海賊団の船長、シャンクスだ
「お頭、どうした?」
視線は本に向けたまま問うが、彼からの応答がないため不審に思い顔を上げる。
「お頭?」
「………」
見れば、いつものはっちゃけた明るい雰囲気ではなく、幾分も暗い面持ちのシャンクス。
いったい何なんだと首を傾げるベン。
「何か言ってもらわないと、分からねぇんだが…?」
ベンが言っても、シャンクスはただ無言を貫き通してベンに近づいてくる。
そして、やっと口を開いた言葉が…
「横、座るぞ」
ぶっきらぼうい言われた言葉に、ベンは本当に何なんだと疑問符を浮かべる。
どっかりと隙間なく、密着してベンの横に座ったシャンクスは、寄りかかるようにしてベンの肩の位置に頭を乗せる。
「どうした?今日はやけに甘えただな」
「そういう気分なんだ…」
再び、本に目をやるベンは横にいる存在に気を配りながら読んでいく。
暫くするとシャンクスは、いきなりベンの腕に自分の右腕を絡ませ抱きついてきた。
流石のベンもこれには吃驚した。
器用に肩眉を上げ、腕に絡まる人物を見る。
腕に寄り添うように抱きつく彼は
それはまるで、甘え足りない猫のようで…
ぎゅっとベンの腕にしがみつく。
ベンははぁ…っとため息を零し、バタンと本を閉じていつもと違う彼を見た。
お頭っと再び呼ぼうとしたが、シャンクスの辛く悲しそうな悲痛な声が一足先に発せられた。
「何処にも…行くな…」
「…お頭…」
「俺を置いて、何処かに逝くんじゃねぇよ…」
今にも泣だしそうな声色。
ベンの腕を更に強く抱きしめた。
自分から、もう二度と離さないようにきつく。
絡められた腕は
まるで切り離せない鎖のように