ルークinヴェスペリア
□始まりの鐘がなる時
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貴族街へと入り、ユーリ達はモルディオの屋敷へと侵入していた。
とりあえず魔導器を探そうと部屋を物色しようとしたのだが、どの部屋にも鍵が掛かっている。
「ユーリ、こっちの扉も開かない!」
二階、最後の部屋となるドアノブをガチャガチャと回しながら、ルークはユーリを仰ぎ見る。
(さて、どうすっかねぇ?)
ルークの頭に片手を置き、こうなったら強行手段か?などと考えていた時だった。
―――ガチャ
「!?」
驚いて声を上げそうになるルークの口を手の平で覆い、二人はそっと階下を覗く。
下の階からドアが開く音と共に出て来たのは、ローブに身を包んだ、いかにも怪しげな人物。
その手には大きめな布袋と共に、捜していた水道魔導器が握られている。
ユーリは「ビンゴ!」と言いながらニヤリと笑い、先に階下へと降りたラピードを追うように手摺を飛び越えた。
「行っちゃった…。」
遠ざかる馬車を見送りながら、ルークはポツリと呟く。
モルディオを追い詰めたまではよかったのだが、モルディオの放った煙玉と、目の前にいるアデコールとボッコスのコンビのせいで、まんまと逃げられてしまったのだ。
おまけに、こんなところでデコボココンビのどちらが上かで揉められていては、ユーリももはや溜め息をつくしかないだろう。
とっとと終わらせてしまおうと剣を構えたところで、ふと、二人の争いを唖然と見ている朱毛の少年が目に留まる。
ユーリは未だ言い合っている二人とルークを交互に見ると、悪戯を思い付いた子供のように楽しそうに笑い、ルークへと話し掛けた。
「おい、ルーク。」
翡翠の双眸がこちらへ向いたのを確認すると、更に笑みを深くする。
「今から剣術の基本教えてやっから、よく見とけよ?」
その時のユーリはとても生き生きしていたと、後にルークは語る。
「無念……なのであ〜る……」
「がくっなのだ……」
「おおー!!」
ぱちぱちぱち―――――
あまりにも一方的に勝負が完全に決まり、思わず拍手を贈るルーク。
そんなルークに、ユーリが苦笑しながら近付こうとした時だった。
突然複数の兵士が屋敷へと押し掛け、まるで逃げ場をなくすように二人の眼前を阻む。