ルークinヴェスペリア
□始まりの鐘がなる時
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「――ク」
「――ルーク!いい加減起きろって!」
肩を揺さぶられ、ルークはぼんやりと目を開けた。
「たく、気絶させられた俺はともかく、なんでお前まで寝てんだよ?」
ユーリが気を失った後、二人は騎士達によって城の牢屋へと連れて来られていた。
牢屋への招待はいつもの事なのだが、隣にルークまでもがすやすやと眠っていた事には少々驚いた。
見たところ危害を加えられた様子もないこの子供は、順応力が高いというか、肝が据わっているというか。
「まあまあ、そう言いなさんな。青年が寝てる間、ずっと泣きながら呼びかけてたのよ?」
「な、泣いてない!!って、ユーリ!?」
聞き捨てならない台詞に完全に覚醒し、ベッドからがばりと起き上がるルーク。
そしてしゃがみこんで様子を見ていたユーリの姿を確認すると、勢いよくその首へと飛び付いた。
「うぉっっ!?」
いきなり不意打ちを食らい、倒れそうになるのをユーリは片手を後ろに着いて耐える。
「ユーリ、ユーリ大丈夫か!?どっか痛くないか!?」
首へとしがみつきながら、不安そうに顔を覗き込んでくるルーク。
泣いてないと言いながら、今にも泣きそうな少年の背中を笑いながら軽く叩いた。
「ちょっと後頭部がいてーけど、大した事ねーから心配すんな。」
「……ユーリ全然目ぇ覚まさねーから、もう起きないかと思った。」
「いや、いくらなんでもそりゃ大袈裟だろ?」
更にギュッとしがみついてくる小さな子供に苦笑していると、隣の牢屋から「お〜い」という、のんびりとした声が聞こえてきた。
「二人の世界に入るのはいいけど、おっさんの事も忘れないでよ〜?」
「……誰?」
「知らないおっさんだ。ああいう胡散臭い奴には気をつけろよ?」
訝しみながらも、声のする方へと顔を向けて聞いてくるルークの頭に手を置きながら、忠告するユーリ。
「ちょ!?ついさっきまで仲良く話してたじゃない!?」
「気のせいだろ?」
「酷いっ何なのおっさん差別なの!?おっさん傷付くよ!?」
はぁ〜と隣から盛大な溜め息が聞こえたかと思うと、ルークが顔を顰めながらユーリの服をくいっと引っ張ってきた。
「ユーリ、おっさん差別したらおっさん可哀想だよ?」
「ありがと少年。でも少年におっさん連呼されるとなんか地味に傷付くわ〜。」