ルークinヴェスペリア
□頼りたいのは…
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扉へと向かいながら、通り過ぎる時にルークの頭を軽くポンと叩くと、今度はちゃんと此方を向いて微笑まれた。
昨日は全く視線を合わせてくれなかった事を思うと、随分と進歩したものだと思う。
部屋を出る前にもう一度ルークへと視線を向けると、飽きもせずまたラピードをじっと見つめていた。
それに軽く苦笑しながら扉を閉め、階下へと降りていると、「おや?」と下から声が掛けられる。
「ユーリじゃないか。これから買い出しかい?」
階段のすぐ下には、ユーリを見上げる女性…この宿の女将さんが笑顔で佇んでいた。
ユーリが「まぁな」と返しながら階段を降りきると、途端に怪訝そうな顔となる。
「あの子は連れてかないのかい?記憶がないってのに、唯一頼れるあんたが出て行っちまったら一人で不安だろ。」
「いや、案外そうでもないぜ?俺よかラピードの方が頼られてるみてぇだしな?」
肩を竦めながら言うと、女将さんは軽く溜め息を吐き、眉根を寄せた。
「部屋に籠ってるのは別にいいけど、あの子が外に出る時はあんたがちゃんと付いててやりなよ?」
「わかってるって。」
女将さんが言いたい事を察し、ユーリも腰に手を当てながら溜め息混じりに答えた。
ルークの上着を脱がした時に気付いたのだが、布地の手触りや刺繍といい、かなり上質な物だろう。
そんな衣服を身に付けるのはどう考えても貴族の人間だ。
下町の住民は基本的にお節介だが、当たり前だが貴族に対してはあまりいい顔をしない。
女将さんからもフレンに相談した方がいいのでは…と言われたのだが、出会った状況がなんとも異質なだけに、騎士団に預けても恐らくなんの解決にもならないだろう。
結果、とりあえず拾ってきたユーリが責任を持って暫く預かるという事になり、顔の広いユーリと一緒なら問題ないだろうと女将さんも許可を出した。
そして現在、同居生活も3日目を突入したところだ。