ルークinヴェスペリア
□頼りたいのは…
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ぶっきらぼうな返事だったが、困っている人物を放っておけないユーリの性格をよく知る彼女は、その返事に満足そうに笑った。
「わかってんなら私から言う事は何もないね。後であんたん所に晩御飯のお裾分けに行くから、部屋で待ってな。」
「おいおい、俺まで引き籠ってろってか?」
部屋に帰れとでもいうように手をひらひらと降る女将さんに言い返しながらも、ユーリは口元を和らげた。
「んじゃ、せっかくなんでお言葉に甘えますかね?女将さんの作る飯ならあいつも喜んで食うだろうし。」
「おや、だったら腕によりをかけないとね。」
「ははっ期待してるよ。」
朗らかに笑う彼女にユーリも笑みを返し、今降りた階段を再び昇ろうとすると、後ろから「ユーリ」と声を掛けられる。
「もし何か困った事があったら、あたしも下町の皆も力になるからね。いつでも頼りな。」
「サンキュ。ま、今でも十分世話になってるって。」
ひらりと手を振りながらユーリは階段を昇り、部屋へと帰っていく。
その様子を見守りながら、女将さんは困っているのか呆れているのか、なんとも複雑そうな表情を浮かべた。
「あんたの場合、゙世話になってる゙じゃなくて、゙世話をしてる゙の間違いだろ?」
元騎士団の青年は、相手が貴族だろうが騎士団の者だろうが、権力を私欲に使い、平民を苦しめるような者には怯む事なく立ち向かう。
そんな彼を下町の者達は親しみ、頼りにしてしまっているのだが、出来る事ならここに縛られる事なく、自由に生きてほしいと思う。
本人に言っても先程のように軽くかわされそうだが。
「さて、期待されてんなら美味しいご飯食べさせてやんないとね。」
腰に手を当てながら気合いを入れると、晩御飯を作る為に彼女も一階の店へと帰っていった。
気合いと栄養を込めた野菜(ニンジン)たっぷりのスープに、ルークが苦戦しながらも全部平らげたのはまた別のお話となる。