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□あなたの愛は尖ってる
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開け放たれた障子の先、獅子脅しの音が響く庭から暖かな風が吹きこみ、縁側には柔らかい日差しが降り注ぐ。
昼寝にはもってこいの陽気に強く誘惑されるが、山本の視線は足元に向けられていた。
日差しがギリギリ当たらない場所にある、ふかふかの座布団の上。
いつもは匣に納められているハリネズミが、すやすやと昼寝を楽しんでいる。

「気持ち良さそうだなー」

あまりにも気持ち良さそうに眠っているので、声は押さえめに。主に似て気配に聡いので気配も押さえて。
ゆっくりと側に座ると、まじまじとその姿を眺める。
見る度に逆立てている刺はただの毛のよう。小さな口からは小さな寝息が聞こえてくる。

「……かわいいなぁ。武器はかわいくないけど」

撫でてみたいけれど、驚いて指に刺が刺さるのは遠慮したい。
起きているときは常に刺を逆立たせ、寝ているときもうっかり触れられない。
ペットは飼い主に似るというが、こんなところまで似ているなんて。
雲雀に見られたならだらしがないと侮蔑の眼差しを向けられそうな顔をして、音をたてないように体を横たえる。

「かわいいよな、本当」

暖かな陽気には逆らえず欠伸を一つもらすと、山本も目を閉じた。



「何してるの」

所用を済ませ戻ってみれば、部屋の片隅でペットが二匹仲良く眠っていた。
小さく可愛い子と大きく可愛くもなく図々しいヤツと。
仲良く寄り添って眠る姿は、雲雀にもうっかりほほえましい様子に見える。
うっかり和んでしまった気分を首を振り切り替えると、人の家で図々しく眠る躾のなっていないペットをしつけるため、トンファーを振りかざした。

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