赤い妄想綴り

□花
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しかし、花畑へ出かける約束は果たせぬまま
幸村は戦場の人となった。

上杉との小競り合いとは言え、それは幾日にも及び
しだいに兵は疲弊していく。

「変わりないか。」
そんな中で、夜半に寝ずの番をする兵士たちに
幸村が声をかける。
休める時には休んでおかなければならないのは承知しているが
どうにも今夜は眠れないのだ。

静かな夜だった。
ふと松明の下を見ると、赤い炎に照らされて
白い小さな花の蕾がいくつも揺れていた。
「…こんなところに。昼間は気づかなかったが…。」
幸村はかがんでその花を良く見ようとしたが
暗い上に花を閉じていてはどんな形かわからない。

…姫。

ふと、姫の顔が浮かんだ。

そうだ、姫と花を見る約束だった…。

幸村は立ち上がりざまに近くに居た兵に言った。
「今すぐ馬を用意せよ。奇襲をかける!」
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