赤い妄想綴り(弐) 

□守らば回れ
1ページ/4ページ


自分の身くらいは守れるように。
せめて、足手まといにならないように。


「幸村様と槍の稽古もいいけどさ、小技を習得するってのも良いんじゃない?」

それは何気ない才蔵の一言から始まった。
いや、何気ないとは言え彼にすれば一応姫の為に考えた事で
万が一槍を振り回す前に襲われた場合に出来る事を覚えておいて損はない。




「で、なんで俺なんだよ?」

幸村との鍛練を終え汗を拭きながら、それでも主との本気の末に少々機嫌も良いのか佐助が
普段ならば即答で断るところを反対に聞いてきた。

「えー、だって十勇士の長だし。」
「そんなの関係ないだろ、お前が言い出したんならお前が教えろよ。
俺が稽古つけたら怪我させるぞ。」

才蔵の後ろで聞いている姫は、幸村にでさえ傷を負いながら鍛練するのを思い出し
ちょっと後悔しかけたが、でもここで怯むわけにはいかない。

皆が必死になって高みを目指しているのだから。

もう守られるだけの存在であってはならないのだ。

「私ならば大丈夫、です。本気で構いませんから…。」
「はあ?馬鹿じゃねーの?俺が本気出したらあんたなんて一瞬であの世だぜ?
姫様のお遊びに付き合ってる暇はないんだ、とっとと…。」

「んじゃあさ!」

佐助が苛々し始めた証拠に爪を噛んだので、才蔵が手を挙げて叫んだ。

「俺が姫様の補佐につくから。ほら、俺たちって諜報で単独行動が多いし誰かを守りながら戦う事ってあんまないじゃん?
その訓練にもなるしさ!」
にっこり笑って姫の前に立ち、その上で庇うように手を広げた才蔵に佐助はため息をついた。

「…いいんだな?手加減は出来ねーぞ。」
「…あ…いや常識の範囲で…。」

背中に汗を感じた才蔵の笑顔が固まったが、佐助は臨戦態勢を取った。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ