赤い妄想綴り
□安定剤
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姫は戸惑っていた。
それはいつもと違い、視線が合ってもそらす事もなく
余裕の笑みさえ浮かべた幸村が正面にでんと座っているからだ。
いや、正確にはその幸村の手にした槍に、である。
「…あのぅ、幸村…。」
姫は朝食の膳に箸を置いた。
「はい、なんでしょうか。」
まっすぐに姫に向かい、実に堂々と姫の言葉を受ける幸村はちらりと膳を見て
「何か不都合でもございましたか。」
と座位のまま、ずいと身を乗り出した。
姫は慌てて
「いいえ、とても美味しいわ。…違うの、
あの、今朝はどうして…その、槍を…?」
「いつ何時でも姫をお守りするためです。」
幸村はまるで用意していたかのように即答した。
…よし!上手く言えたぞ。
内心ガッツポーズをしながら。